&EYES あの人が見つけたモノ、コト、ヒト。
小さな幸せを運んでくれる庭。写真と文:齋藤拓磨 (花屋『Hljóð (ヒュウド) 』店主) #2November 12, 2025

そういえば、1年前は防草シートが敷かれていたんだったなぁ。
以前、物置や駐車場として使われていた『Hljóð(ヒュウド)』のお庭は、
時間を感じさせるような、コケのついた防草シートに覆われていて、
その頃は、まだどこか眠っているようでした。
そんななかでも、シートの隙間やコンクリートの割れ目から顔を出す雑草が
小さく「ここにいるよ」と語りかけているようにも見えました。
シートを剥がし、土を掘り起こして。
埋まっていた石の塊を飛び石にしながら、
芝や種、苗を植えていくと、そこにはやわらかく、やさしい空気が流れはじめました。
お店と一緒にお庭も、ゆっくりと時間を重ねてきたのだと思います。
4月に訪れた長崎の雲仙で、譲ってもらったコットンの種。
小さな芽が出て、花が咲き、実を結ぶまでのあいだ、
ほんのわずかな変化が、日々の暮らしに小さな幸せを運んできてくれました。

そして先日、綺麗な白い綿をのぞかせる実を見つけました。
そっと摘んだ綿は、本のページのあいだに挟んで。
紙の上で転がるその姿は、
ベッドの上で気持ちよさそうに寝転んでいるようでした。





























