&EYES あの人が見つけたモノ、コト、ヒト。

アーユルヴェーダの代表的なオイルマッサージ、アビヤンガで心身を整える。写真と文:久保直子 (ウェルネス&ビューティジャーナリストほか) #2December 11, 2025

アーユルヴェーダでは、健やかに自分を整える方法の1つとして、ディナチャルヤ=1日の理想的な過ごし方を教えられています。そのなかでも特に推奨されているのが、アーユルヴェーダの代表的なオイルマッサージ、アビヤンガです。

アビヤンガは、血行を促し、消化力を高めるほか、体の浄化や老化防止など、さまざまな効果が期待できます。セルフアビヤンガでは、一般的に、セサミオイルを中心としたアーユルヴェーダ独自のオイルを使いますが、まずはどんなオイルでも構いません。ココナッツオイルやホホバオイルなど、自分が使いやすいものを選んでください。

シャワーやお風呂の後に保湿目的でオイルを使う方も多いと思いますが、アーユルヴェーダでは、まずオイルマッサージを行い、その後にシャワーまたは湯船に浸かります。

私の場合、平日は常温のまま、休日など余裕があるときは、オイルを湯煎で温めて使っています。温めたオイルは、肌への心地良さや馴染みが高まり、老廃物の排出を助けてくれます。

スリランカでアビヤンガを受けたサロン。「しなやかな自分を作る4つの日常ごと②」〜アビヤンガ (オイルマッサージ) で心身を整える〜。写真と文:久保直子 (ウェルネス&ビューティジャーナリストほか) #2
スリランカでアビヤンガを受けたサロン。

予想以上の効果を実感したアビヤンガ。

このアビヤンガを「日常ごと」の1つにしたきっかけは、通っていたアーユルヴェーダの学校の課題で、ディナチャルヤを実践し、記録したことでした。それまでの私は、1日の生活リズムが乱れており、寝る時間も日によってまちまちでした。そこで、まず朝起きる時間を一定に整えることを心がけ、さらにアビヤンガをきちんと行うことを決め、ディナチャルヤを開始。課題は3か月ほどで終わり、ディナチャルヤによる効果についての発表も終えました。気づけば、自分の心と体がこれまでにないくらい整っていたのです。

「しなやかな自分を作る4つの日常ごと②」〜アビヤンガ (オイルマッサージ) で心身を整える〜。写真と文:久保直子 (ウェルネス&ビューティジャーナリストほか) #2
こちらのサロンではヘッドマッサージを。

アビヤンガで心身の状態をチェック。

マッサージは全身を優しく流すのが基本です。肘、膝などの関節にはしっかりと塗り込み、目の周りは優しく、くるくると撫でるように行うのがポイント。頭皮は、自律神経のバランスを整えやすくするといわれている部分でもあり、アビヤンガの際はもちろん、入浴後もマッサージしています。ちなみに朝は、髪を濡らさないので、乾いた状態のまま、夜は髪を乾かした後に行います。

頭皮マッサージは、リラックス効果だけでなく、頭皮を柔らかくすることで、顔のたるみ予防にも繋がります。たかが頭皮マッサージと侮るなかれ。それを日常の一コマに組み込むのが大切です。アビヤンガをするだけで、これだけのケアを一度に行うことができるのです。また、私はこのときに胸も触ります。これは、しこりができていないかを確認するためで、乳がん予防です。さらに、足はむくんでいないかなど、体のトラブルもこのタイミングでチェックします。

スリランカで購入したアムラオイルや、ドーシャを鎮静させるオイル。「しなやかな自分を作る4つの日常ごと②」〜アビヤンガ (オイルマッサージ) で心身を整える〜。写真と文:久保直子 (ウェルネス&ビューティジャーナリストほか) #2
スリランカで購入したアムラオイルや、ドーシャ(生命エネルギー)を鎮静させるオイル。

自分を労ることで、精神的にも落ち着く。

手間がかかるように感じられるかもしれませんが、実際にはあっという間です。ザーッと流して、体や頭に触れ、熱いシャワーを浴びます。すると、目が一気に覚め、体が温まります。所要時間はおよそ10分程度だと思います。

アビヤンガは、1日に1回行えば十分とされていますが、私はあえて朝と晩の2回行います。

毎日、自分の体に触れることで、「今日はむくみが気になるな」「筋肉が凝り固まっているな」「頭皮が硬いな」と、変化にすぐ気づけるようになります。夜のアビヤンガは、運動後に行うことが多いため、念入りにほぐすことができます。

大切なのは、日常の一コマに組み込むこと。触れることを習慣にしていくこと。最近では、肌に触れると、”幸せホルモン”と呼ばれるオキシトシンが分泌されることもわかっています。オキシトシンが分泌されると、ストレスを緩和し、心が安定し、多幸感を得られるといわれています。また、前述したように、頭皮マッサージを行うことで、自律神経の副交感神経が優位となり、リラックスする効果も得られ、さらに、たるみ予防や乳がん予防など、全身のオイルマッサージにはさまざまなメリットがあるのです。

実際に、私もアビヤンガを習慣にしてから、心身の調子が整うのを実感しており、この習慣を続けています。

アーユルヴェーダで使われるアムラオイル。「しなやかな自分を作る4つの日常ごと②」〜アビヤンガ (オイルマッサージ) で心身を整える〜。写真と文:久保直子 (ウェルネス&ビューティジャーナリストほか) #2
アーユルヴェーダで使われるアムラオイル。

年齢を重ねたいま、心と体のバランスを整えてくれる。

全身のケアをするとき、マッサージグッズを使ってもいいと思いますが、やはり最も効果的なのは手によるケアだと考えています。「お手当て」という言葉があるように、痛みのある部分に手を当てて癒やすことは、手でなければ成り立ちません。

私自身、不安や心配ごとがあるときには、よく胸に手を当てて落ち着きを取り戻します。手を使うことで、体温が伝導し、心が静まるように感じるのです。マッサージも、温かい手でさすることで、体も心も温まり、触るごとにしなやかになっていきます。

年齢を重ねるほど、自分と向き合うことが難しく感じられる時期もあるかと思います。そんなときこそ、毎日自分に触れる時間をもてるオイルマッサージが、心と体のバランスを整えてくれるでしょう。

幸せに年を重ねるためにも、そして予防医療の観点からも、アビヤンガは、非常におすすめです!

しなやかな体と心のために、ぜひ実践してみてください。


ウェルネス&ビューティジャーナリスト、植物療法士、アロマデザイナー 久保直子

久保直子
くぼ・なおこ/美容ライター時代に培った美容や健康の知識に加え、AMPP認定メディカルフィトテラピスト、DTWフラワーエッセンスプラクティショナー、フランス式スポーツアロマテラピスト、アーユルヴェーダライフカウンセラーなどの資格を取得。また、女性ホルモンケア、ストレスマネジメント、睡眠、など植物療法やアーユルヴェーダを軸にした独自のウェルネス&ビューティライフについて、企画&発信、執筆している。性教育やフェムテックにも精通し、セミナーやワークショップ活動のほか、アロマデザイナーとして、香りのお守り「Beautiful mind」や、ドゥーオーガニック「アロマバスソルト」、ウーマンエキサイトRetoiro「オールインワンシャンプー」の香りをプロデュース。最近では、Junのオリジナルコスメブランド〈ポロロッカ〉のプロダクト開発、ブランディングを担当。数々のアワードを受賞したデリケートゾーン用のクレンジングオイルやアダプトゲンハーブを凝縮した化粧液など多数開発。

instagram.com/naonaonaozou

Pick Up 注目の記事

Latest Issue 最新号

Latest Issuepremium No. 145料理好きの台所。2025.11.19 — 980円