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脚本とごはん。土井善晴先生に教わった、日々の味。写真と文:高野水登 (脚本家) #4May 26, 2025
私は映画、ドラマ、アニメ、漫画などの脚本を書いて生計を立てています。
ただし、もちろん食えない時期はあったわけです。その頃は実家にいながら、それでもおいしいものが食べたい&食べていても許される理由が欲しいと、家族の料理を積極的に作っていました。
やっていてよかったなと思うのは、若いうちに家庭料理が肌で身についたことです。
普段の生活においてもそうですが、作品作りにも役立ちました。
特に現代を舞台にしたテレビドラマを書く時は、家庭の描写が不可欠なんですよね。特に脚本で指示しなくても現場で上手いことやってくれるのですが、やはり知っていると書ける幅が広がるものです。
ちなみに、漫画だと食の描写は「あちゃー」なものが多い傾向にあると思っています。
大きな原因としては、作家さんが若く、駆け出しなのでお金もなく、食に興味がないパターンが挙げられます。特に少年漫画のファンタジー作品で、“最上級のごちそう”としてハンバーグが出てくる確率は相当高いです。色々と想像して胸がキュッとします。
また、ごはんを作ることは、自分の忙しさのバロメータにもなっています。料理する余裕もない時は危険信号。常にごはんを炊いて、味噌汁を作るくらいの余裕は持っていたいものです。

こうした考え方や、家庭料理の基本は、土井善晴先生から学びました。
どの本も素晴らしいですが、2022年に放送が終わってしまった「おかずのクッキング」という番組内のレシピをまとめた『土井善晴の素材のレシピ』(テレビ朝日)という本は永久保存版です。
食材一種類から作れるレシピが膨大にあり、食材からレシピが逆引きできることも大きな特徴で、本当の意味で「冷蔵庫にあるもので作る」ができます。絶版ですが、中古でまだ買えるのでおすすめです。
……と、これを書きながら、最近外食が続いてるなと気づきました。
今日はごはんを炊こうと思います。塩むすびにしちゃおうかな。
edit : Sayuri Otobe
脚本家 高野水登
