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壊れてしまったものでつくった本。写真と文:浅見旬 (編集者、ライター) #4March 25, 2026
劇作家、デレック・ウォルコットがノーベル文学賞受賞時のスピーチで語った「割れた花瓶」の比喩は感動的だ。以下に引用する。
“Break a vase, and the love that reassembles the fragments is stronger than that love which took its symmetry for granted when it was whole.”
「花瓶を割ってみなさい。その断片を再び寄せ集める愛は、それが完全だったときにその均整を当然と受け取っていた愛よりも強いのです」
『私が諸島である カリブ海思想入門』中村逹(書肆侃侃房)より引用
西洋列強によりカリブ海諸国が経験した苛烈な歴史について、ウォルコットはその悲劇を嘆くのではなく、「詩」や文学が、その分断された歴史の断片を繋ぐのだと強く語る。カリブ海文学・思想を研究する中村達(なかむら・とおる)による『私が諸島である カリブ海思想入門』(書肆侃侃房)のなかで引かれたこのフレーズを読み、商品を壊してばかりの古物商は考えるところがあった。

昨年、「TOKIO ART BOOK FAIR」への出展に際して、福岡の『本屋青旗 Ao-Hata Bookstore』と、美術作家・藤田紗衣さんが主催する出版社「pharmacy」との3組で『GAP』という、シール帳の体裁をした本をつくった。タイトルは「割れ目」や「隙間」という意味とともに、わたしたちの頭文字(「G」oods、「A」o-HATA、「p」harmacy)を繋いだものでもある。内容はきわめてシンプルで、『Goods』がこれまでに生んだ割れ物の欠片をAからZ、0から9に見立てて書体化し、シールにして一冊に綴じた。読者は実際にアルファベットを、つまり、かつての陶器の破片、イメージの断片を自由に組み合わせて遊べる、というもの。ウォルコットが説く、かたちを失った断片を再び寄せ集めることの尊さに対して、われわれなりに、すこしバカらしい回答をしてみたかったのだ。
ウォルコットの比喩を真正面から受けて、割ってしまった自分の不注意を肯定するのには、すこし無理がある。けれど、割れ物を継いでよみがえらせる偉大な手間も、割れた破片を使い、見立てて一冊の本に作り変える図々しさも、同じ種類のたくましい想像力だと言いたい。
編集者、ライター 浅見 旬




















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