&EYES あの人が見つけたモノ、コト、ヒト。

なぜ、いま映画館を創ることを目指したのか。写真と文:稲田良子 (ミニシアター『シネマリス』支配人) #1January 09, 2026

ただの一人の映画好きに過ぎない私が、2025年12月、東京・神保町にミニシアター『シネマリス』を開業しました。

配信サービスが全盛の時代に、なぜミニシアターを?

それは昔からの漠然とした夢を思い出しながら、いったん走り出したらそのまま実現に行き着いた、というのが実感です。

なぜ、いま映画館を創ることを目指したのか。写真と文:稲田良子 (ミニシアター『シネマリス』支配人) #1

20代の頃はよく映画を観に行きました。ミニシアターはもちろん、名画座での旧作の「特集上映」も大きな楽しみでした。『バーバレラ』(1968)や『新幹線大爆破』(1975)。ジャンルも年代もバラバラな映画を観ていたことを思い出します。

30代後半にふと思い立って、映画会社「アップリンク」が主催する映画配給のワークショップに通ったことがありました。

同じ受講生の中に、「いつか自分で小さいシアターを開きたい」と言った方がいたことを覚えています。そのときの私は、「もっと学生の頃にちゃんと頑張って映画関係の仕事に就いていれば良かったのにな」と思いながらも、あくまで会社員生活の息抜きの延長としか考えていませんでした。

大学卒業後は法律事務所の秘書として働いていた私は、小心者ゆえ、定年退職が職業人としての目標でした。仕事が忙しくなり、映画館に行く回数も減りましたが、東京・飯田橋の『ギンレイホール』にはよく通いました。「年間パスポート」を購入すれば上映作品が見放題になる、今であればサブスクというべき名画座でした。

なぜ、いま映画館を創ることを目指したのか。写真と文:稲田良子 (ミニシアター『シネマリス』支配人) #1
なぜ、いま映画館を創ることを目指したのか。写真と文:稲田良子 (ミニシアター『シネマリス』支配人) #1

年々、時間が飛ぶように過ぎることにおののき、さらにコロナ禍を経験すると、「このままの生活で良いのだろうか」とたびたび考えるように。職場では後輩に頼りにされる日々でしたが、気付けば、後輩たちのほうが、余程仕事ができるまでに成長しており、ここではない別の場所で、何か違うチャレンジをしたいと思うようになったのです。

「個人で映画館を立ち上げた人がいる」と思い出したのは、そんなタイミング。

2022年に、前述の『ギンレイホール』と、東京・神保町の『岩波ホール』という老舗のミニシアターが相次いで閉館しました(*『ギンレイホール』は、再開予定でいったん閉館)。その一方で、東京・菊川には『Stranger』という、個人が立ち上げた映画館が誕生していました。

これをきっかけにいろいろ調べてみると、郊外や地方でも、個人がミニシアターを立ち上げる動きが活発になっていることを知りました。

「そうか! こういう形で映画業界に携われることもあるのか」と思うと、かつての夢がじわじわとよみがえり、迷いながらも、”一から自分で映画館を作り上げること”について考え始めるようになったのです。

なぜ、いま映画館を創ることを目指したのか。写真と文:稲田良子 (ミニシアター『シネマリス』支配人) #1
なぜ、いま映画館を創ることを目指したのか。写真と文:稲田良子 (ミニシアター『シネマリス』支配人) #1
なぜ、いま映画館を創ることを目指したのか。写真と文:稲田良子 (ミニシアター『シネマリス』支配人) #1

ある日、『ギンレイホール』の跡地が気になり、飯田橋を訪れると、ビルも、お馴染みの看板も、そのまま残っていました。その光景を眺めるうちに、「よし、まずは動いてみるか」という気持ちが湧いてきて、その足で、近くの商店街にある不動産屋さんに飛び込んだみたのです。そしたら、不動産屋の方が面白がって話を聞いてくれ、手始めの物件探しに大きく弾みがつきました。そこから、手探りの日々が始まっていきました。


ミニシアター『シネマリス』支配人 稲田良子

稲田良子
いなだ・りょうこ/ 新潟県出身。長年の法律事務所の秘書生活から急転、ミニシアター支配人を目指す。2025年12月、東京・神保町にミニシアター『シネマリス』を開業。

cinemalice.theater

Pick Up 注目の記事

Latest Issue 最新号

Latest Issuepremium No. 146ひとりでも、韓国・ソウルへ。2025.12.19 — 980円