From Editors
どこへ行っても同じことばかりしている。編集後記「旅をしたくなる、美しい暮らしのある町」June 21, 2023
器とレコード、本を探す、“自分だけの旅”。
自分の旅のスタイルは国内でも海外でも、だいたいは器とレコードを探し、書店を巡り、そしてまた器とレコードを探して……の繰り返し。おいしいものや絶景は二の次で、どこへ行ったって同じことばかりしているわけですが、旅する場所が違えば見つかるものも違います。「やたらとピンク・フロイドのレコードのラインナップがいい店だなあ、近くに暮らす愛好家が売りに来たのかな。1枚引き継がせていただこう」とか「海外文学がとても充実している書店だから、店主におすすめを聞いて買ってみよう」、「都内でも取り扱い店が多い窯元の器だ。だけど、この形は見たことなかった! 買おう買おう」など、旅先で購入したものを家で眺めては、そのときの記憶が蘇ってきます。観光地に行くわけではないので、誰かに話して盛り上がれるようなエピソードは生まれませんが、それでこそ“自分だけの旅”。下手すると写真の一枚も撮らずに帰ってきてしまうものの、その旅は確かに翌日からの暮らしの一部になって、家のあちこちに旅の思い出が積み重なっていきます。
盛岡、鎌倉、松本、尾道、熊本、那覇……、美しい暮らしのある町を旅した今回の特集。熊本出身鎌倉在住の僕は、地元といま暮らす場所の取材ページを担当することになりました。知ったつもりの土地でも、発見は尽きないもの。各地の案内人に教えてもらったスポットは、ローカルの人々の生活に溶け込む素晴らしい場所ばかりでした。観光地の紹介はほとんどありませんが、誰かの“自分だけの旅”のきっかけになれば、と自信を持っておすすめできる内容です。ぜひ書店で手に取ってみてください。
(本誌編集部/松﨑彬人)