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Column

April 25, 2020 音楽家・青葉市子×写真家・小林光大が紡ぐ、旅と日々の記憶。Choe「Prologue」

クラシックギターを片手に国内外を旅する音楽家の青葉市子さん。各地でインスピレーションを汲み上げながら、日々、言葉と音楽を紡いでいます。その旅に同行し、風景を切り取っているのが、写真家の小林光大さん。旅先のみならず、日々の生活に戻ってもなお、互いの存在と作品は呼応し合い、2人の創作活動は続いていく。

この連載では、旅と日常とまたぎながら2人が生み出したものを「Choe」と名付け、青葉さんのエッセイと音楽、小林さんの写真を交えながらお届けします。紀行文のような、あるいは、自室で綴った日記のような。2人の旅と日々の記憶を、お楽しみください。

初回は、沖縄への旅から生まれた、プロローグを。

 

Prologue

 

2020.1.31 泊港ゲストハウスにて収録。

 

海辺の町で、ギターを弾いていると、ぱちんと弦がはじけました。
まっすぐ前に流れていた時間が急に回転し、
吐き出した息吹は肺に戻ってくるではありませんか。
換気扇から抜けていったはずの音楽も、
潮風とともに、再びこの部屋に充満してゆきます。

夜の水面から届く、ちかちかとした灯台の反射は、そのうちまあるく集まって、
静かな部屋の中に、光の球体を生み出してゆきます。
眩しさに目を瞑り、次々にからだへと流れ込んでくる、
先ほどまでうたっていた歌に耳を澄ませると、
聴こえてくるのです。

 

echo echo echo e choe choe choe

 
 

時間や空間は、
いまここだけに存在するものではないのかもしれません。
一つの時間や空間にとどまっているように思えて、
実は、いくつもの時空に、同時に存在することもできる。

こうして四角いキーボードを押している今も、
息を吸えば、ピアノの鍵盤を叩いていて、
息を吐けば、窓の開いた海辺の部屋に移り、
目を閉じれば、波間のかがやきの一粒にだってなれるのです。

 

 

music & text:Ichiko Aoba photo:Kodai Kobayashi