MUSIC 心地よい音楽を。

ソングライター、ギタリスト 君島大空さんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.1October 06, 2023

October.06 – October.12, 2023

Saturday Morning

Title.
Track You Down
Artist.
Sondre Lerche

挨拶

季節の外圧を受けずに、音楽を始め諸芸術を見聴きすることで、各々が自分の気分をチューニングできる余白がある時間が、秋という季節には多いように感じる。土曜の朝と日曜の夜、この2点間の情緒の起伏たるや(ここに関しては季節に限らず)壮絶なものだろう。だが、あまり重くとらえず、軽やかに選曲をしてみたい次第である。

私の大好きな秋の導入。誰もいない通りを風が吹き抜けていく。まだ少ない落ち葉や夏に比べると高く、遠く、澄んだ色の空が焼けていく。まあここから夜は長くなっていくわけだし、いつから今日を始めたっていいと僕は思う。まず体や部屋に残った夏の粗熱を取る為に窓を開ける。思ったよりも冷えた空気を部屋が吸い込んでいく瞬間は私にとって指折りの幸せな時間だ。彼はノルウェーのシンガーソングライター。友人にこのアルバムを教えてもらったのが丁度今頃だったのを記憶している。心身のチューニングを季節に合わせようと思う頃、いつもこの曲から秋を始めている。
アルバム『Two Way Monologue』収録。

Sunday Night

Title.
So This Is Goodbye
Artist.
Stina Nordenstam
さようならに至るまでの回想を許された時間。何かの節目。或る時間が終わってから始まるまでの滞空。何者でもない時間の軽さ。諦めと清々しさと少しの疲れ。それらを包み込む俯きがちな温かさにずっとうっとりしている。ギターが主体になった独特のダイナミクスのある小さなアンサンブルがいつ聴いても新鮮だ。その真ん中に立つ彼女の声には、残響やエコーのような処理はなく、ただひとりそこに居る。どこかずっと寂しい、けれど、音のない余白に、自分の記憶や景色が優しい肌触りでオーバーラップしてはどこかへ流れ消えていく。秋の音響だ、と思った。僕はスティーナの作る世界にずっと憧れている。彼女はスウェーデンのシンガーだ。前述のソンドレはノルウェー、と偶然にも隣り合った国の人たちの歌を選んでいた。
アルバム『And She Closed Her Eyes』収録。
&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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ソングライター、ギタリスト 君島大空

1995年東京都青梅市生まれ。ギタリスト/サウンドプロデュースとして、吉澤嘉代子、中村佳穂、細井徳太郎、坂口喜咲、RYUTist、adieu(上白石萌歌) 、高井息吹、UA、荒谷翔太(yonawo)など様々な音楽家の制作、録音、ライブに参加。2019年「午後の反射光」ep を発表後から本格的にソロ活動を開始。 2019『午後の反射光』(APOLLO SOUNDS)、2020『縫層ep』(APOLLO SOUNDS)、2021『袖の汀ep』(APOLLO SOUNDS)2023『映帶する煙』(1st Album)(APOLLO SOUNDS)『no public sounds』2nd Album(APOLLO SOUNDS)

twitter.com/ohzr_kshm

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