INTERIOR 部屋を整えて、心地よく住まうために。
世界の民芸で味わう、組み合わせの妙。インテリアスタイリスト、島 尊行さんの住まい。November 18, 2024
年代や国を超えて、作り手の思いや暮らしを想像する。
日本のみならず、世界のクラフトが好きだというインテリアスタイリストの島尊行さん。自宅にはアメリカやメキシコをはじめ、イギリス、ドイツ、デンマーク、ウクライナ、ルーマニア、インド、タイ、そしてアフリカ諸国まで、洋の東西を超えたさまざまな国のものが並ぶ。
もともとダンサーを志していた島さん。ゆえにブラックミュージックやアフリカンカルチャーに興味があったが、その後、ヨーロッパのヴィンテージ家具や小物を扱うインテリアショップに入社。そこで各国の古いものに触れ、組み合わせる楽しみを知る。独立した今、仕事の場でも自宅でもディスプレイする上でこだわるのは、どんな素材なのか、テクスチャーの相性。作られた背景が違っていても、不思議と調和が取れるのが手仕事の面白さだと感じている。
「壁に飾っているアフリカの伝統的なタペストリーは、いちじくの木の皮を一枚一枚重ねて作った伝統的なもの。反対側の壁に吊るしているのは、タペストリーではないけれど台湾のタイヤル民族の男性用の衣装。祭典でよく使われるもので動物の毛で織られている、とても繊細な手仕事によるものです」
伝統的な工芸品だけでなく、昔のファクトリー製品にも心惹かれる。
「例えば1950~70年代にドイツで生産されていた陶器“Fat Lava”は東西ドイツのものがたくさんありますが、僕が好きなのは西ドイツ時代のベイケラミック社のもの。釉薬に溶岩をたっぷり使った鮮やかな色彩と独創的なスタイルは工業製品でありながら、一つひとつ違って、作家性やクラフト性を感じます」
また、昔のロシアやウクライナの古い陶器のように、当時の暮らしぶりが想起させられるものも。
「このミルクピッチャーは注ぎ口だけ釉薬が施されているんです。裕福ではない環境下で、すべてはできないけれども、ほんの一部、釉薬をのせるような工夫をしている。実用性はもちろん、暮らしを楽しもうとする思いが伝わってきます」
家にあるものは古いものが多いが、時に年配の知人から「これを持っていてほしい」と譲られることもあるという。ヴィンテージものを自分たちの代に受け継ぐことは、同時にその気持ちも受け継ぎ、さらに次の代へ繋いでいくことでもある。
「そういったものを介した人との繋がりを大切にしたい。特に手仕事から生まれたものは、年代や国を超えて作り手の思いや暮らしが想像できるものが多い。それこそが、民芸やクラフトの楽しみだと思います」
島 尊行 Takayuki Shimaインテリアスタイリスト
インテリアショップ『SHARK ATTACK』で、買い付けやスタイリングを手がける。2024年独立。アウトドア好きで湖畔の森での暮らしを計画中。
photo : Masanori Kaneshita edit & text : Chizuru Atsuta