Lifestyle

暮らしに溶け込むグリーンのエッセンス。〈アクタス〉曽我広範さんの、植物を育てる暮らし。April 18, 2023

2023年4月6日発売の特別編集MOOK「花と緑を愛でる」。花の飾り方、植物との暮らしの実例を中心に、本誌がこれまで特集してきた、ボタニカルなBetter Lifeを一冊にまとめました。ここでは、〈アクタス〉MD・グリーンバイヤー・スタイリスト・曽我広範さんの、植物を育てる暮らしを紹介します。

Life with GreensBLENDING IN STYLE

NAME Hironori Soga  OCCUPATION Green Buyer, Stylist

リビングのシェルフは、インテリアショップに勤務する曽我広範さんが植物と雑貨のコーディネートを思い切り楽しむスペース。
リビングのシェルフは、インテリアショップに勤務する曽我広範さんが植物と雑貨のコーディネートを思い切り楽しむスペース。
インダストリアル感のあるベンチには多肉植物などドライな雰囲気のグリーンがよく似合う。園芸バサミなどの道具類、土や肥料はまとめてワインケースに入れ、ベンチ下に。
インダストリアル感のあるベンチには多肉植物などドライな雰囲気のグリーンがよく似合う。園芸バサミなどの道具類、土や肥料はまとめてワインケースに入れ、ベンチ下に。
線香花火に似た葉を広げるアスパラガスは狭い窓辺に奥行きを出してくれる。
線香花火に似た葉を広げるアスパラガスは狭い窓辺に奥行きを出してくれる。

グリーンとインテリアと自分が気持ちよくいられる空間をデザイン。

 都内屈指の広さを誇る公園に近く、周辺には低層住宅が並んでいる。インテリアショップ〈アクタス〉でグリーンのバイヤーとして活躍する曽我広範さんが住むテラスハウスは、空の広さを感じるエリアに立つ。さらには2階のリビングはロフト付きの天井高。四方の窓から十分光が注ぐなか、40ほどある鉢植えの緑が気持ちよさそうに葉を伸ばしていた。

 曽我さんがグリーンを語るとき、必ず、「飾る」とか「置く」ではなく「スタイリングする」とか「コーディネートする」と表現する。

「以前アパレルに勤めていた経験があり、ファッション畑出身というのが影響していると思います。まずは服と服を組み合わせる”スタイリング”にハマり、それが空間デザインへの興味へと繋がったので。何であれ、組み合わせ次第で、見た目の印象やバランスが変わって見える、それぞれに異なる作用をするという法則が、面白くてたまらないんです。焦点が緑や花に絞られていったのは、庭づくりが好きな母のおかげ。植物が身近だったからかもしれません」

 グリーン部門を立ち上げるタイミングで〈アクタス〉に入社したことで、ますます植物と家具や雑貨の関係性への興味が増していった。

「植物をどこか雑貨を見るような視点で捉えているところがありつつも、同じ生活空間で共存する仲間のような存在だとも思っていて。日々の暮らしに必要な家具や趣味の民芸品、アートや書物、そしてもちろん僕自身と相まみえながら、互いに無理をしないでいられるバランスをキープできたら最高だなあと……」

部屋の中央にある柱に沿わせるようにして置いたフィカス・アムステルダムキングは2m超え。足元を別の鉢で囲んで”生い茂っている感”を演出した。
部屋の中央にある柱に沿わせるようにして置いたフィカス・アムステルダムキングは2m超え。足元を別の鉢で囲んで”生い茂っている感”を演出した。
素焼きの花器は「パウル・クレーのポスターと相性がよさそうだった」ので床に下ろしている。
素焼きの花器は「パウル・クレーのポスターと相性がよさそうだった」ので床に下ろしている。
フサフサとした根茎が特徴的なシダはトキワシノブ。
フサフサとした根茎が特徴的なシダはトキワシノブ。
テレビのすぐ右手に配したレゴのブーケは「電化製品とグリーンの繋ぎ役」を担う。
テレビのすぐ右手に配したレゴのブーケは「電化製品とグリーンの繋ぎ役」を担う。

 例えばシェルフの上の、赤い葉に水玉模様のベゴニア・マクラータ。これは隣にある柚木沙弥郎のリトグラフの色と柄を拾って選んだという。黄色い表紙の本には黄色いフリージアを寄り添わせたり、横一列に並ぶ複数の鉢は色や素材をあえて変え、単調にならないようにしたりしたのも、スタイリングの一環だ。そんなふうに、熟考した上で配置された植物は、唐突な存在感を放つようなことはなく、空間になじんで映り、居心地もよさそうだ。

「グリーンは動きを出せるのもいいところ。長い葉を垂らしたり、居場所からはみ出させたり、ハンギングして葉を伸びやかに見せたり。植物にリラックスしてほしいというのもありますし、見ているこちらは、室内にいながらにして臨場感を得られるメリットも。歩いていると道の脇から長い木の枝がぶわっと飛び出していることってあると思うんですが、まさにあの風景を再現するイメージです。ジャングルで大木の根元にシダがわさわさと自生している感じとか。そんな風景を思い浮かべながら、ああでもないこうでもないって、やっているんです」

 数あるグリーンの手入れも、似たもの同士を近い場所でスタイリングすることで、楽になるという。

「水やりのペースが同じとか日陰を好むとか乾かし気味でとか。毎日一から十まで見なくてもいい工夫をして、共に気負わず暮らしています」

暮らしに溶け込むグリーンのエッセンス。〈アクタス〉MD・グリーンバイヤー・スタイリスト・曽我広範さんの、植物を育てる暮らし。
通り側の窓辺には、ハンギンググリーンを高低差をつけて吊るし、カーテン代わりにした。「帰宅時に見上げては『いい感じ』とひとりにんまりしています(笑)」
PROFILE

曽我広範 〈アクタス〉MD・グリーンバイヤー・スタイリスト

インテリアショップ〈アクタス〉でインテリアグリーンを提案する〈NODERIUM〉の立ち上げから携わり、ブランドディレクションや買い付けを担当。

曽我広範

photo : Ayumi Yamamoto text : Koba.A

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