Lifestyle

好きなことには、時間と手間を惜しまない。
『TRUCK』オーナー・唐津裕美さんの暮らし方とセンス_前編April 11, 2022

2022年3月19日発売の『&Premium』の特集は「センスがいいって、どういうことですか
」。さりげなく素敵で、背伸びをしなくても洗練されている。漠然としているけれど確かに何かが違う“センスがいい”ということについて、ライフスタイルからファッション、カルチャーまで、探ってみた一冊です。ここでは、『TRUCK』オーナー・唐津裕美さんのセンスのいい暮らし方を、「大切な場所」や「毎日の習慣」からひもときます。

この記事は前編です。後編はこちらから。

1.家の中の大切な場所。 Comfortable Room

自宅のリビング。ソファの上にいるドイツ〈ケーセン〉のぬいぐるみは『TRUCK』でも販売。左手奧にあるギターは高校生のときに買ったもの。
自宅のリビング。ソファの上にいるドイツ〈ケーセン〉のぬいぐるみは『TRUCK』でも販売。左手奧にあるギターは高校生のときに買ったもの。
旅先で買ったものなどお気に入りが並ぶ。ひりんこ(唐津さんの愛称)のコレクション「ひりコレ」を収納するため、白のラボラトリーシェルフを作った。
旅先で買ったものなどお気に入りが並ぶ。ひりんこ(唐津さんの愛称)のコレクション「ひりコレ」を収納するため、白のラボラトリーシェルフを作った。

リビングで犬や猫とともに寛ぐ。それも心地いい時間。こだわりポイントは、キッチンとひとつながりの広い空間にしたこと。大きな窓から望める庭には、落葉樹を中心に、好きな樹々を時間をかけて探して植えた。ここだけでなく、家のすべての窓から樹が見えるように設計されている。

2.毎日の習慣 。 Daily Routine

『TRUCK』の店内。窓のサイズは大きすぎて想像がつかなかったので、知り合いのフォ トスタジオを借り、原寸大にマスキングテープを貼ってサイズを確かめた。TRUCK 黄瀬徳彦 唐津裕美
『TRUCK』の店内。窓のサイズは大きすぎて想像がつかなかったので、知り合いのフォ トスタジオを借り、原寸大にマスキングテープを貼ってサイズを確かめた。

店には毎日、顔を出す。習慣としているのはディスプレイに手を加えること。 「なんでも自分の目の届く範囲でやりたくて。家具の卸などお話もたくさんいただくのですが、すべてお断りしています。目がいかないと、どうしてもぶれてしまう。それは『TRUCK』ではなくなってしまうと思うんです」

3.大好きなものたち 。 Important Things

「海外の蚤の市などで出合う、売っているのか落ちているのかわからないブサイクな子が 好きなんです」と、集まってきたクマたち。まだまだたくさんいる。
「海外の蚤の市などで出合う、売っているのか落ちているのかわからないブサイクな子が 好きなんです」と、集まってきたクマたち。まだまだたくさんいる。
デザイン事務所に就職したときに購入。中身は見開き 1 週間のものを使用。犬にかじられ るなど思い出も詰まっている。「ここまで来たら、死ぬまで使おうと思っています」
デザイン事務所に就職したときに購入。中身は見開き 1 週間のものを使用。犬にかじられ るなど思い出も詰まっている。「ここまで来たら、死ぬまで使おうと思っています」
小学生のときに買った手鏡と中学生のときに買ったポーチは、今でもお気に入り。鏡は地 元の商店街にあった、なんでもない店で300円で購入した。
小学生のときに買った手鏡と中学生のときに買ったポーチは、今でもお気に入り。鏡は地 元の商店街にあった、なんでもない店で300円で購入した。
ギターを初めて手に入れたのは高校生。予算オーバーでも木目や色がいいものを選んだ。
これは最近入手した自分と同年代の小ぶりなオールドギター。木目も気に入っている。
ギターを初めて手に入れたのは高校生。予算オーバーでも木目や色がいいものを選んだ。 これは最近入手した自分と同年代の小ぶりなオールドギター。木目も気に入っている。

「好きなものは、物心がついた頃からまったく変わっていません」と、唐津さん。 佇まいも含めて愛おしいブサイクなクマ。革のシステム手帳カバーは、就職して初めて買ったものを30年以上、使っている。小学生の頃から趣味が一貫していることがわかる、手鏡とポーチ。ギターは最近購入したもの。

好きなことには、時間と手間を惜しまない。

「好きなものは人それぞれ。なので、センスは良い悪いではないし、正解もない。私は自分が取り立ててセンスがいいとは思っていません。ただ、好きなものははっきりしている。それが独自のスタイルをつくっているんだと思います」 と、唐津裕美さん。

パートナーの黄瀬徳彦さんと、大阪で家具店やカフェを展開する『トラック』を営む二人の自宅は、店の隣。行き止まりになった約640坪の敷地に店とカフェ、工場、アトリエ、倉庫、自宅が並び、周囲は学校に囲まれている。駅からも近く、理想的な立地だが、ここを見つけるまで4〜5年かかったという。もとはタクシー会社の土地で、その建物や駐車場を壊すところから始まり、時間をかけてプランを考え、新たに心地いいと思う空間を一から作った。

そういった時間と手間を惜しまないのも、唐津さん自身や、作るもののセンスを形成する要素。 「建てるにあたっては、膨大な時間と労力がかかっています。でも、自分たちが住むところを自分たちで好きに作っているわけだから、 楽しいし、面白い。それを時間がかかるからこの程度でいいか、と投げ出す選択肢はなかったですね。 妥協するくらいだったら初めから作る意味がないと思うんです。そして、いいものを作るには、時間がかかって当然」

それは、彼女たちのものづくりのベースにもなっている。

「これが格好いい、これが好きと いうものだけを作っているし、売っています。流行しているから、売れ筋だからと置いてあるものはなく、創業して25年、自分たちの〝好き〞だけでやってきました」

だから、家もアトリエも店も、同じような空間になる。

「家が100%で、店が50%なんてあり得ない。どちらも100%だから、同じようになるのは当たり前。暮らし方のセンスって、自分たちの心地よい場所が作れているかどうかだと思います」

自宅で使うものも店で売るものも一緒。家具も試作品を家に持ち込み、実際の生活の中で使って改良を重ねていく。リビングで唐津さんが座っている「FK SOFA」も商品化するまでに1年かかった。

習慣にしているのは、店のディスプレイを変えること。毎日、店に行ってその日の気分で手を加え る。天気や光の入り具合で心地い いバランスも変わるので、欠かせない行為なのだ。

「でも、スタイリングの勉強をしたことはないし、法則も知らない。これがお気に入りだから目立つところに置いてみようなど、直感です。どう並べたいかより、どう見たいかで決めています」

そして、好みは物心がついた頃 からぶれることなく一貫している。大好きなものとして見せてくれたべっ甲風の手鏡は小学生、布製ポーチは中学生のときに買ったもの。中学生のときに自分で選んだ学習机も、スチール製のグレーの事務机だったという。

「子どもの頃から好みははっきりしていました。ポーチのように長く使っているものも多くて、店にあったら今でも買うなあ、というものばかり。不思議ですよね」

唐津裕美 『TRUCK』オーナー
Hiromi Karatsu

大阪生まれ。大阪芸術大学を卒業後、デザイン会社勤務を経てイラストレータ ーに。1997年に黄瀬徳彦さんとともに『TRUCK』をオープン。2009年、建物、 樹々、レンガ塀などすべてを一から考えた、大阪市旭区の現在の場所に移転。
https://www.truck-furniture.co.jp/

photo : Yumiko Miyahama edit & text : Wakako Miyake

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