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人を引き寄せる、ゆるやかな水辺のリズム。京都・鴨川、ローカルガイド。前編February 24, 2026
市内を南北に流れる鴨川でも、今回歩いたのは御池通から北に丸太町通を上がったあたりまで。人で溢れる四条から1㎞ほど離れただけで川と街の表情は大きく変わり、エアポケットのような余白に人と水鳥が集う、穏やかな雰囲気。このエリアを両岸にまたがり北欧雑貨店『歩く鳥』の酒向歩実さんが案内してくれた。
&Premium148号(2026年2月号)「京都、ローカルガイド」より、鴨川エリアのローカルガイドを紹介します。この記事は前編です。後編はこちらから。



Kyoto Local Guide_鴨川
盛り上がる仁王門通を軸に、川を渡って西へ東へ。
今回紹介した鴨川沿いのエリアで、北欧雑貨とアパレルのショップ『歩く鳥』と『フォーム 歩く鳥』の2店舗を手がける酒向歩実さん。店を開いて以来、川に沿って南北に延びる街にお気に入りが増える日々。酒向さんがいま特に注目する仁王門通からスタートして、散歩ルートを辿った。
仁王門通は交通アクセス至便でいて、町家や寺院が軒を連ね、普段着の京都が感じられる場所。「昔から暮らす人たちによって醸された、街の温かみがいい。ここで店を構えたオーナーさんたちも、雰囲気を大切にしながら店づくりをしているのが伝わってきて」
この通り沿いで、仕事の後や友人との待ち合わせによく立ち寄るのが、レトロビルの一室にある『メトン』。「スイーツもお酒も楽しめる、懐の深いお店。デザートならシュークリーム、仕事終わりのビールを飲みたいときは甘くないマドレーヌサレの生ハム添えを」
仁王門通から少し南、住宅街に佇む『ロブコーヒーハウス』は、その秘めやかなロケーションも魅力だと教えてくれた。
「初見だとわかりづらいですが、京都らしい路地からコーヒーを焙煎するいい香りがして、ふらりと誘い込まれますよ」
そこから北を目指し、桜並木が季節ごとに表情を変えていく冷泉通へ。眼前には琵琶湖疏水。酒向さんの『歩く鳥』もこの通りに。疏水対岸のヴィンテージマンションにはニューオープンの『フォーム 歩く鳥』がある。迎えるのは、酒向さんのパートナーであり、ともに店づくりに取り組んできた八尋鶉さん。
「2つ目の店というより1店舗目の延長のような感覚ですね。二人でつくる『歩く鳥』の世界観を共有しながら、それぞれのパーソナルな雰囲気を反映できたらと思っています」
両店を行き来する際に小さな橋から目にする、クラシックなレンガ造りの水力発電所とダムも印象的。そんな景観も、ふたつの『歩く鳥』を回遊する楽しみの一部だ。
川の向こう側、河原町通沿いにもショッピングの楽しみが待っている。アパレルのバイヤーとして長く活躍し、現在も自店で洋服を扱う酒向さんにとって、『ラビット古着店』は感性を刺激される存在。
「色の組み合わせやディテールに遊び心のあるヴィンテージのお洋服を見ているうちに、着こなしを考えたくなります。さりげなく並んでいる小物も、コーディネートのアクセントになりそうなものばかり」
『タマス京都店』は、ずらりと並ぶオリジナルのアクセサリーはもちろん、どこを切り取ってもチャーミングな空間そのものが作品のようだと惚れ込む。さらに河原町通と鴨川の間には、エリアに根差したおすすめの店がひしめく一帯が続く。
「何を選んでもおいしい『ベーカリー ウキ』や遊び心がちりばめられた空間が楽しい『ミーミーミー コーヒーハウス』、厳選された本が知らない世界に連れていってくれるブックショップ『誠光社』。どこも通うほどに好きになって、素通りせずにいられません」
再び川の東側に戻り、二条通周辺を歩く。カフェのような気軽さで本格的な洋食が味わえる『イノツチ洋食店』でランチの後は、グロサリーストア『マニーナ』で手土産や自分へのご褒美を探す。そして最後に、エリアを代表する老舗酒場へ。
「いつも少しドキドキしながら『赤垣屋』の扉を開けて、入店できるととてもうれしい。職人気質の無駄のない所作や活気が大好き」
鳥のように自由に右岸と左岸を行き来しながら、酒向さんの鴨川さんぽは続く。
ガイド 酒向歩実 『歩く鳥』オーナー
愛知県出身。滋賀県立大学環境建築デザイン学科卒業後、モノと関わる仕事を志し、京都に移住して雑貨と服飾のセレクトショップ『アンジェ河原町本店』に入店。アパレル部門のバイヤーを経験し、2023年に『歩く鳥』を開業。’25年11月に2 号店『フォーム 歩く鳥』を構える。


鴨川の東側から巡るなら、京阪鴨東線神宮丸太町駅で下車して南下。西側からなら地下鉄東西線京都市役所前駅で下車して北上がおすすめ。御池通や二条通、丸太町通と短い間隔で橋があるので、東西の行き来も気軽に。もちろん川沿いに下りるのも忘れずに。ベンチでひと休みして、飛び石にチャレンジを。
photo : Yoshiki Okamoto edit & text : Aya Honjo illustration:naohiga








































