MUSIC 心地よい音楽を。

ギタリスト、作曲家 藤本一馬さんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.4February 27, 2026

February.27– March.5

Saturday Morning

Title.
Kyamdro Semkye
Artist.
Chöying Drolma and Steve Tibbetts
 今日は大事な日になりそうな朝。それぞれの生活の中でいろいろな場面があるなかで、ときに緊張感を持って目覚める、そんな日もあると思います。それが楽しくテンションが上がることであっても、ちょっと重苦しいなと思うことであっても、変わらないのは、いつもの自分でいたいという思い。心は静かに、落ち着いていたいのです。そんなときに聴いていたくなる1曲が「Kyamdro Semkye」。
 アニ・チョイン・ドルマはネパール出身のチベット仏教尼僧でありマントラ歌手。その声を、アメリカのギタリスト、スティーヴ・ティベッツが幽玄なアンビエントサウンドで包んでいく。ティベッツがネパール滞在中に彼女と出合い、僧院での読経を録音。それを持ち帰り、自身のギターやサウンドスケープを対話するように重ねて完成させた、美しきコラボレーション作品。この曲のタイトルは、仏道に帰依し、悟りを目指す心を起こす、という祈りの言葉。心に響く声と瞑想的なギターサウンドが、内側から浄化するように満たしてくれるような気持ちになります。
アルバム『Chö』収録。

Sunday Night

プロデューサー、シンガーermhoiさんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.2
Title.
Endless Stars
Artist.
Fred Hersch
 演奏会で自然豊かな土地を訪れる機会に恵まれることがあります。演奏が終わり、一日を終える夜、ふと空を見上げると、街灯もなく、星がひときわ鮮やかに輝く瞬間は特別です。静かにまたたくその光は、何年、何百年も旅して、ようやく地球に届いたものだと思うと、胸に熱い想いが込み上げてきます。「Endless Stars」は、空間を描くように繊細に奏でるピアニスト、フレッド・ハーシュによる美しいメロディ。NYの『ヴィレッジ・ヴァンガード』でトリオ演奏されたライブ盤からの一曲は、宵の口の澄んだ空気の中で、終わりなき星たちに明日への希望をそっと託したくなる力があります。ボーカルのノーマ・ウィンストンが歌詞をつけて歌った『Songs & Lullabies』収録のデュオバージョン「Stars」も素敵です。優しい魅力に溢れるこちらは、夜更けの静寂とともに聴きたくなります。
 冬の星空は、一年で最も美しいと言われています。2月最後の日曜日の夜(暦の上では3月の始まりですが)は、そんな夜空に想いを馳せながら選曲してみました。
アルバム『Live at the Village Vanguard』収録。


ギタリスト、作曲家 藤本一馬

藤本一馬
1998年、ヴォーカルのナガシマトモコとともにorange pekoeを結成。2001年にミニアルバムでデビューし、翌’02年のアルバム『Organic Plastic Music』で各種音楽賞を受賞。 ‘11年よりソロ活動を本格化。メロディアスな作曲と詩的なギター表現を軸に、静謐で時間の流れを感じさせるインストゥルメンタル作品を発表しており、『SUN DANCE』、『Dialogues』、『My Native Land』、『FLOW』などのアルバムをリリースしている。 国内外のさまざまなアーティストとのコラボレーションをはじめ、楽曲提供、ライブやレコーディング、映像作品の音楽制作、舞台音楽など、活動は多岐にわたる。 最新作として、’25年11月にピアニスト・林正樹とのデュオ名義によるアルバム『Unfolding in Time』を発表。 また、ドキュメンタリー映画『粒子のダンス』の音楽を担当し、同作は2026年3月に一般公開が予定されている。

Pick Up 注目の記事

Latest Issue 最新号

Latest Issuepremium No. 148京都、ローカルガイド。2026.02.19 — 980円