MUSIC 心地よい音楽を。

音楽家・いろのみさんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.2May 10, 2024

May.10 – May.16, 2024

Saturday Morning

Title.
3 Gymnopédies: No. 1
Artist.
Pascal Rogé
僕の音楽教室では、ピアノを再開する大人の生徒さんに必ずこの曲から始めてもらう。この曲は、単純な解釈では表現しきれない難しさがある。
レッスンで曲に対してのイメージを問うと、朝と答える人もいれば、夜と答える人もいる。曲に対しての解釈が人それぞれだったり、答えが一つではなかったり、はたまた答えが見つからなかったり、それが音楽の面白さだと僕は思う。音楽は答えを探す旅のようだ。
ヒーリングミュージックとしても用いられるような楽曲だが、人によってはこわいという印象を持ったり、独特な緊張感が漂うこともたしか。サティは捻くれ者と言われていたこともあり、簡単には答えに辿りつかない。解釈に苦しんでいる時間はまるで曲の冒頭に表記されている「ゆっくりと苦しみをもって」という言葉にマインドコントロールされているようだ。それでも僕は、この曲を土曜日の朝に聴きたい。このなんとも言えないアンニュイな朝の始まりが、人生を表しているかのようだ。(柳平)
アルバム『Satie: 3 Gymnopédies』収録

Sunday Night

Title.
Images Set 1: l.Reflets dans l’eau
Artist.
Monique Haas
邦題では「水の反映」と題されたこの楽曲は、文字通り水の脈動や光を表現したような美しい響きから始まる。個人的には、ドビュッシーの代表曲でもある「月の光」にも並ぶくらい、月の黄金に輝く光が降り注いでいるような印象を感じる。この曲も数多くのピアニストが演奏しているが、フランスのピアニスト、モニク・アースの演奏がとても好きだ。ちょうど良いテンポ感と美しい音色のバランスはドビュッシーの音の世界を限りなく近く表現されているように思う。
月明かりが美しい夜に、湖の水面にその光が映っている。そんな景色にこの曲の冒頭の響きが聴こえてきたら、それはとても幸せな時間に違いない。(磯部)
アルバム『Debussy & Ravel: Piano Works』収録
&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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音楽家 いろのみ

柳平淳哉(Piano)と磯部優(Programming, 17strings)によるユニット。ピアノと弦楽器、そして有機的なエレクトロニクスによって「季節のさまざまな色の実を鳴らす」ことをコンセプトに活動する。これまでに〈KITCHEN. LABEL〉〈STARNET MUZIK〉〈涼音堂茶舗〉〈ironomi rec〉より計12枚のアルバムをリリース。2015年12月には中島ノブユキ、沢田穣治、haruka nakamura、Aspidistrafly をはじめとする様々なコラボレーターを迎えた7thアルバム『虹』を〈KITCHEN. LABEL〉よりリリース。2024年3月には、12作目となるアルバム『四季』を〈ironomi rec〉よりリリース。冬から春に移り変わる景色、初夏の瑞々しさ、秋の実りの喜びと染まっていく山々。それらの色が巡り、星へと瞬いていく物語。活動16年目にして初めて「四季」をテーマに作品を制作。

ironomi.com

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