NICHIYOHIN 暮らしを豊かにする道具。
東京・早稲田の『on the shore』を訪ねて。中国家具や民具と、モダンデザインが調和する場所。November 04, 2024
「はじめて合った」意匠を見つめる、面白さ。
中国の王朝「明」と「清」の時代に生まれた家具はいわゆる〝中国家具の最盛期〞。装飾を限りなく抑えた線の美しさが際立った意匠である。インテリア業界で長く仕事をしてきた店主の谷俊介さんは、現場や旅先で、その魅力に引き込まれた。「外国人駐在員の住まいに家具を納品する際、モダンデザインの家具と中国家具が融合したしつらえに新鮮さを覚えたんです」
それは店を始める10年ほど前のこと。中国に縁があり、「明式家具」や中国の工芸にまつわる歴史を学び、ものを探す冒険の旅に出た。
「『明式家具』の魅力はなんといっても、曲線と直線の調和にあります。装飾を抑えたデザインを追求した気品が宿る家具は、実は人間工学的にも考えられていて。椅子に座ってみると背筋がピンと伸びたりする。それでいて、ヨーロッパの重厚感のある家具よりも細くて軽量なところがいい。何より自分にとって、〝見たことがない〞ものなので、面白さがあるんです」。その言葉通り、店に点在する暮らしの道具も谷さんの目に〝珍しいもの〞として映ったものだけがある。それらが、現代のプロダクトとよくなじんでいる様子が素敵だ。中国の歴史と文化が織り込まれた絨毯、地域に根付く民具、日本の作家が作った独特のゆらぎを放つグラスや花器、磁器で作られたランプシェードなど。どれも、目を楽しませてくれる意外性が随所に見られる。
「中国は大胆なつくりのものから〝超絶技巧〞で作られたものまで、ものづくりの領域に幅があります。古いものはつくりがいいものが多いですし、また、現代のものにはない〝佇まい〞にも惹かれているのだと思います」
『on the shore』の谷 俊介さんに教わる、今の暮らしになじむ道具。
on the shoreオン ザ ショア
東京都新宿区早稲田鶴巻町560‒5‒1F ☎03‒6228‒0657 12:00~17:00(土日祝~18:00) 火水木休(祝日の場合営業) 早稲田駅1 番出口より徒歩約7 分。中国家具、上海アールデコの家具を中心に独自のセレクトでインテリア空間を提案する。店名は、陸と海を隔てる「境界線=波打ち際」がキーワード。「中国家具専門店」とは一線を画す個性的な空間。
谷 俊介Shunsuke Tani
イタリアの高級家具メーカーをはじめとしたインテリア業界で商品の仕入れや流通、メンテナンスなどを学び、独立。インテリアショップへの卸売りも行っている。
photo : Mitsugu Uehara text : Seika Yajima