INTERIOR 部屋を整えて、心地よく住まうために。
植物の存在を喜ぶ。フラワースタイリスト・平井かずみさんに聞いた、心地よく過ごすための空間づくり。February 17, 2026
豊かな暮らしを追求する人々を訪ねた&Premium147号(2026年3月号)「部屋を心地よく、整える」より、フラワースタイリスト・平井かずみさんに聞いた心地よく過ごすための空間づくりを紹介します。

花が呼び覚ます、暮らしの情緒。
一輪でも花があるだけで、その場の空気感が変わる。というのは誰しもが経験あること。生命の象徴でもある花は、空間の印象を左右する、力強いアイテムでもある。平井かずみさんの自邸でも、一年を通して、花や枝ものがさりげなく配されている。
「例えば玄関に花があると人が来たときに〝もうすぐ春ですね〞など、会話のきっかけになるんです。暮らしの花って景色のなかにあるもの。まじまじと観察するわけではなく、ちょっと目をやった先に植物があることで、嬉しい気持ちになると思うんです」
その、ふとした小さな幸せが数百円から得られるのだから、満足感はひとしお。
「飾る上で難しいセオリーはありませんが、枝ぶりや咲き方には、それぞれが育ってきた姿があります。もとの環境ではどんなふうだったのかをイメージするといいと思います。枝ものも、ただまっすぐに立てるのではなく、太陽に向かって枝を伸ばしているところを想像しながら、ちょっと傾けてみる。すると、そこに風が通っているように感じられます。実際に風が吹いているわけではありませんが、そういった風や色といった自然界の感覚を室内に取り込むことで、家がより居心地のいい場所になっていきます」
花器も特に決まりはなく、花を見ながら合いそうなものを探すのも、楽しみの一つ。
「私は枝ものはクリアなガラス器に入れることが多いです。だんだんかわいらしい根が生えてくるのを見られるし、光を受けてキラキラするのもきれいだし、キンとした清冽さもあります。根が伸びるだけでなく、冬の枝ものは芽吹いたり、花が咲いたりもするので、その変化がとても愛おしい。一緒に季節がやってくるのを待っている気分になります」
食器を活用することも多く、実ものを入れた器は、アンティークの薬のみ器。簡単に取り合わせただけだが、陶器の白に実の朱色が映えて、季節感を息づかせている。
「こうでなければいけないと考えずに、根っこがついたままのソテツをポンと器にのせるだけでもいい。花選びも真面目に考えすぎずに、花屋さんに行って、ピンときたものを選ぶだけで十分です。もともとお花や植物自体がときめく存在なので、何を選んでも失敗はありません。花束にしなくても一本だけだって構わないんです。色もそのときに素敵だと感じたものが、自分の心にそっているもの。黄色に惹かれたら、元気をチャージしたいのかもしれないし、ピンクなら優しい気持ちになってリラックスしたいのかもしれない。器も花もかわいいと思ったものを選べば、どんな組み合わせでも不自然になることはないので、素直に信じて大丈夫です。それでも花合わせに悩んだら、旬を揃えてみてください」
植物が部屋になくても生活はできる。けれど「あるかないかの人生だったら、あって、それを美しいと感じられるほうが、圧倒的に豊か」だと平井さんはいう。
「出張や旅行で留守にして帰ってきたら、まず植物を生けます。誰もいなかった空間って無機質になってしまうのですが、お花を飾ったとたんに有機的になって、呼吸を始めたようになります。空間の雰囲気がガラリと変わるんです。そこでようやく自分の家に帰ってきたと思えて、安心できます」
花は古来、人の営みのすぐそばにあった。自然のままの風情を愛でるだけでなく、手折って祈りに添えたりもしていた。
「もともとは室内に飾るのではなく装身具にしたり、身を守るものとして接していたと思うんです。ずっと人の心の支えになってくれていた、本当に身近な存在なんです。だから、植物とともにいて喜びを感じるのは、ごく当たり前のこと。せっかく自分のところに来てくれたのなら、精いっぱいかわいらしく飾ってあげたいと願っています」
平井かずみKazumi Hirai
フラワースタイリスト。草花を身近に感じる〝日常花〞をテーマに東京・恵比寿のアトリエ「皓 SIROI(しろい)」や全国の教室、ワークショップで活動。雑誌やCMなどでのスタイリングも手がける。
photo : Takashi Ehara edit & text : Wakako Miyake











































