FASHION 自分の好きを身に付ける。
スタイリスト・金子夏子さんに教わる、ものとの付き合い方。「身に着けたものを その日のうちに手入れする」November 07, 2024
大切なものを長く使うために、 簡単にできることを積み重ねる。
アウターやニット、革靴など、お手入れの必要なものを身に着ける機会が増えていく、これからの季節。まずは、平日に2、3分でできる簡単なことから実践していきたい。スタイリストとして25年にわたり活躍してきた金子夏子さんに、日常的に心がけているティップスについて聞いてみた。
帰宅したら、すぐに干す。
私は、毎日できるお手入れをしているだけで、特別なことは本当にしていないんです。ファッションを楽しみ、心地よく過ごすためにルーティンとしてやっていることがいくつかあるだけで。基本的なスタンスとして、気に入って購入したものは、長く身に着けていたいタイプなので、やはり、ものを使った後にすぐにお手入れをすることが大切だと思っています。
スタイリストという職業柄、撮影に出かけたり、洋服のリースに回ったり、動き回ることが多いこともあり、身に着けるものは、わりとタフに扱っても大丈夫なものを好んで選ぶようにしています。たとえば、スニーカーの場合、同じモデルのローカットとハイカットを購入して、いずれかを「汚れてもいい一足」として、使うというふうに。登場頻度が高いものは、そうした準備をするのも手ですね。
家に帰ってきたときに、まず取りかかるのは、ルームウェアに着替えて、その日に身に着けた洋服や靴を〝軽く干す〞こと。秋冬は春夏に比べるとそこまで汗をかかないですが、外で仕事をすると、どうしたって足に汗をかいてしまうもの。そして、雨で濡れてしまった場合も、即座に干して乾かします。ベランダや窓辺など、直射日光が当たるスペースは、干す場所として避けるのがベター。それぞれのアイテムに影響が出てしまうこともあるので、日陰かつ、風通しのいいスペースを意識して選んで。たとえば、衣類はコートハンガーに掛けてみるのもいいと思います。靴は、革靴もスニーカーも紙を敷いて干すようにしています。その後にブラッシングが必要なものは、軽めにブラシをかけておく。そうすると、次に身に着けるときが楽だし、気持ちいいんです。
形崩れを防ぐためのアイテム。
靴底をリペアできるような革靴は、長く履くために靴磨きのお手入れ以外にもうひと手間加えるようにしています。形崩れを防ぐためには、やっぱり、シューキーパーが欠かせません。このマイルールは、革靴を履くようになってから、ずっと続けていること。アッパーのつぶれや、履き崩れ、履きジワを整えてくれます。使っているのは木製のもので、吸湿性が高いように感じますし、プラスチックのものよりも見た目が美しい。その状態で靴箱に入れて収納しています。ホコリが溜まらないように、玄関に置きっぱなしにするのは避けたいですね。
そして、服を掛けるときは、針金ハンガーのような細いものを使わないようにするのがよいと思います。服の重さがうまく分散しないため、変に肩が出てしまい、跡がついてしまうことも
あります。私は、肩にちょうどいい厚みがあるスチール製のものを愛用中。クローゼットで場所を取ってしまう木製ハンガーよりも使い勝手の良さを感じています。
ファスナー、ボタンは閉める。
衣類を干して風を通すときやクローゼットに収納するときに心がけてほしいのは、ボタンを全部留めたり、ファスナーを閉めたりすること。それだけで、簡単に形崩れを防ぐことができます。何も気にせずバサッとハンガーに掛けた状態だと、絶対にハンガーからずれてしまう。本当にちょっとしたことなんですけれども、意外に盲点なんですよね。
ハンガーの掛け方を整えたら、クローゼットがぎゅうぎゅう詰めにならないようにすることも大切。適度な隙間をつくりつつ、ものに湿気がこもらないような工夫をしてみるといいでしょう。日本は湿度が高いので、衣類やレザーアイテムが傷みやすい。だからこそ、クローゼットにあるものもたまに出して、風を通すことが大事。たとえば、バッグも隙間なく収納してしまうと湿気がこもって傷みやすくなり、レザーの状態が悪くなることもあります。だから、使ったカバンはそのまま出しておかず、購入したときの布袋に収納するようにしています。
アクセサリーはガーゼで拭く。
私がふだん、肌に直接身に着けているのは、シルバーのリングやバングル、時計など。どれも堅牢なものです。帰宅したらすぐに外して、ガーゼを使って優しく拭いて。これも毎日のルーティンにしています。クロスは、シルバー専用のものを選んでももちろんいいと思いますが、わざわざ購入しなくても、ガーゼで十分、きれいになります。やっぱり、肌の皮脂や汗などが残っていると傷んでしまうので、その日のうちに、取り去るようにしています。パールの場合も同様です。
アクセサリーは、日の当たる場所に置くと変色してしまう可能性があります。だから、購入したときのケースに入れ、さらにチェストの中に収納して大事に保管しています。
金子夏子 Natsuko Kanekoスタイリスト
1969年、埼玉県生まれ。女性モード誌、カタログ、広告などで活躍。休日は登山やロッククライミング、バックカントリースキーなど、四季を通じて山に出かけており、アウトドアアイテムを生かしたスタイリングに定評がある。SUPをはじめとした、海や川でのアクティビティにも挑戦中。
illustration : Shinji Abe (karera) edit & text : Seika Yajima