INTERIOR 部屋を整えて、心地よく住まうために。
写真家、在本彌生さんが巡り合った、愛しく思う手仕事の数々。使ってこそ、暮らしが豊かになるものを。December 05, 2024 /〔PR〕
大分県別府市の伝統的工芸品である、別府竹細工。熟練の職人の確かな手仕事で作られる、製品としての美しさとつくりの良さが魅力です。そんな別府竹細工を暮らしに取り入れて心地よく住まう人たちを訪ねました。ここでは写真家の在本彌生さんの住まいを紹介します。
竹細工の佇まいと、つくりに魅せられて。
「旅することが日常」である在本彌生さん。尽きない好奇心と向学心を携え、日本各地、世界各国を巡り、その土地固有の文化や営み、そこに暮らす人の眼差しを追いかけ、写真を撮り続けてきた。それは、彼女の“ライフワーク”といえる。そして、料理やライフスタイルをテーマにした日常的な撮影の仕事でも、“文化的なたのしみ”を感受することを大事にしている。そのことを静かに物語るのが、この家にある素敵なものたちだ。
在本さんが旅先や仕事現場、日常で出合い、魅せられた手仕事のものがそこかしこに点在している。なかでも、目を引くのがカタチや編み方の個性によって、様々な表情を見せるかごの数々。壁にリズミカルに飾り、食材や調味料を収める“居場所”にしている様が、なんともあったかく、なおかつ美しい。聞けば、竹細工の魅力により深く惹き込まれたのは、料理の撮影現場でのことだったという。
「料理家の細川亜衣さんの料理の撮影を長く担当していて、彼女のキッチンにある道具に触れる機会がありました。そのときに、中国製の竹の水切りかごを使っている様子がとても心地よいな、と感じて。プラスチック製のものがほぼ何もない状態のキッチンの様子を、真似したいと思うようになりました。そこからですね、竹素材をはじめとした、かごを暮らしに少しずつ取り入れるようになったのは」
感化されて、最初に使うようになったのは、高知の虎斑竹専門店『竹虎』の水切りかご。
「修繕しながら10年ほど使っています。食器を洗った後にきちんと拭いて、かごの中に収める。それだけで置いたときに格好がつきます。その状態を眺める時間が好きですね。実際、かごは十数年前から使うようになって、家にあるのは日本各地、中国やアフリカのものなど様々ですが、空間の中にある程度数があることで、見た目的にも楽しくなるような気がしています。使い続けていると、少しずつ竹の色が経年変化して飴色に変わっていくんです。生活の中に存在するものとして、“時間の経過”が感じられるところも魅力のひとつですよね」
そして、キッチンカウンターに佇むコロンとした形が愛らしい「白竹 菜摘みかご」は、別府市で作られたものだ。
「いろんなかごを使ってみて思うのは、別府竹細工はとてもしっかりしたつくりで、とても丈夫だということ。そして、編み目が美しいのも印象的。『菜摘みかご』は、すべり止めを施した持ち手つきなので、家の中で移動がしやすいところも気に入っています。だから、日常でよく使うものを収めたいと思って、旅先で購入したハチミツをいくつかまとめているんです。最近、リトアニアに旅する機会が多いのですが、現地の人たちにはハーブティーにハチミツを加える習慣があって。私もふだんの日常でその習慣を取り入れるようになりました。旅を回想しながらお茶を飲む余白の時間が好きですね」
心安らげるお茶の時間に、コーヒーを選ぶこともある。そんなシーンで使ってみたいのが〈ビームス〉と別府市との取り組みとして2024年に制作された、ふるさの納税返礼品のコーヒードリッパー「TSUBAKI」。「やたら編み」といって、太さや節の異なる素材をランダムに編み込んだ、デコラティブなデザインだ。ちなみに編み方の名前は「やたら」が語源。手当たり次第に編み込んだ様子を示した、伝統的な技法である。
「私はコーヒーを淹れるとき、家にあるガラス製品にドリッパーを置いて抽出することが多くて。だから、竹細工のコーヒードリッパーは、そういうフレキシブルな使い方にすんなり馴染みやすくていいな、と思いました。今日使ったのは、親交が深い山野アンダーソン陽子さんのグラス。ものすごく高温の熱湯を注がなければ問題なく使えると聞いたので、ドリップするときに使っています」
ものの用途にとらわれずに、いろんなシーンでの使い方をイメージして使ってみる。在本さんの“ものとのしなやかな付き合い方”は、私たちの日々の暮らしのヒントになるだろう。
在本彌生 Yayoi Arimoto写真家
2000年より写真を撮り始め、2006年よりフォトグラファーとして活動を開始。以来、雑誌、書籍、展覧会などで作品を発表。著書に『在本彌生写真集 わたしの獣たち』(青幻舎)、『熊を彫る人: 木彫りの熊が誘うアイヌの森 命を紡ぐ彫刻家・藤戸竹喜の仕事』(小学館)などがある。2025年にはリトアニアをテーマにした自著や『中国手仕事紀行』(青幻舎)の第2弾を刊行予定。
photo : Kazuho Maruo text : Seika Yajima
別府竹細工の魅力に迫る本サイト内の小特集「THINGS FOR BETTER LIFE」は、以下のリンクからご覧ください。