LIFESTYLE ベターライフな暮らしのこと。
あの人は、どんな器を使っているのか。
04 料理家・麻生要一郎 &Utsuwa 器の基本と、楽しみ方。October 30, 2022
2022年10月5日に発売した「&Utsuwa 器の基本と、楽しみ方。」では、陶磁器やガラスや漆器、古伊万里や世界各国の器など、27人の器好きたちの使い方を紹介しています。そこで、料理家の麻生要一郎さんが使っている骨董を軸に新旧をミックスした器の数々を見せていただきました。
TIMELESS CHARMS骨董を軸に新旧ミックスで。
自分の料理と譲り受けた器に新たな景色を見る。
大きな唐揚げ、細く細く切られた美しいきんぴらごぼう、ふっくらとした焼き魚、ほんのり甘いホウレン草のごま和え。祖母や母が作るような、昔ながらのおかずを詰めたお弁当が大人気の麻生要一郎さん。自宅での食事も同様に、気取らないおかずばかりが並ぶ。そんな料理を盛り付けるのは、主に養母から譲り受けた古い器たち。実は麻生さんは、7年前、越してきたマンションの大家である姉妹の養子になっているのだ。料理上手な”姉”(養母)は、麻生さんが料理の仕事をしていることを知り、「こんなのあったわよ」「これ使う?」と頻繁に器を譲ってくれるのだとか。
「もらった器に嫌いなものは一つもないけれど、もしお店に並んでいたら、自分では選ばないかもしれない。でもそんな器に自分のいつもの料理を盛ると、意外なほど映えるのが不思議で。同じ料理も器によって印象は変わるけれど、自分の料理ともらった器の組み合わせには、自分だけでは見えなかった景色がそこにあるという感じがします。そういう出合いが面白いんですよね」
譲り受けた器は、ほとんどが江戸時代に作られた古いもの。染付や九谷焼といった華やかな器も多く、それだけで食卓を構成するといささかトゥーマッチな感がある。そこで、手持ちの現代作家の無地の器やガラスの器を交ぜて、抜け感を出すように意識しているそう。
「とはいえ、自分で買った器もほとんどが益子の高齢の陶工が作ったものや、実母から受け継いだものだったりするので、なんとなく全体的にモダンというよりはクラシックな感じがするのかもしれません。益子の器はスケボーに乗って器の行商をする『器 つか本』さんから購入しています。彼もまた独特な品揃えで」
取り皿や汁椀に使っているのは、友人の実家から譲られた漆器。現代ではあまり見かけないような華やかな洗朱色が、麻生家の食卓だと自然に見える。一般的には手入れが面倒だと思われがちな漆器を「おやつをのせたり、取り皿としたり、ラフに使うのが好き」という麻生さんのミックス感覚がなんとも魅力的。
「クセが強い人でも話を聞いていると面白いし、学ぶことがたくさんある。同じように器も、僕のところにくるっていうご縁も含めて愛おしいし、大切に使っていきたいと思っています。手に入れたときは戸惑うくらい個性的なものもあるけれど、今ではうちの食卓に大きな存在感を占めているんですよね。もうなくてはならないものになっています」
photo : Akiko Baba text : Shiori Fujii edit : Chizuru Atsuta