TRAVEL あの町で。
音楽家の坂本美雨さんと、壮大な歴史と自然を体感できる熊野古道伊勢路へ。 &MIE vol.4March 19, 2024 /〔PR〕
音楽家・坂本美雨さんが、知られざる三重の魅力を訪ねる連載、第4回。
世界遺産の参詣道と、自然信仰の名残をとどめる古社、風光明媚な海岸線……、
東紀州と呼ばれる三重県南部では、壮大な自然に触れる体験が待っていました。
訪れた人 坂本美雨
さかもと・みう/音楽家。昨年デビュー25周年を迎え、リリース、ライブ活動を精力的に行う。TOKYO FM『ディアフレンズ』パーソナリティ、『村上RADIO』などのラジオ出演や、著者として『ただ、一緒に生きている』(光文社)も刊行。
世界遺産登録の節目を迎える、 信仰と自然が溶け合う東紀州。
古より信仰を集めてきた吉野・高野山・熊野の霊場を結ぶ熊野古道。数えきれないほどの人々を熊野三山へと導いてきた参詣道だ。「紀伊山地の霊場と参詣道」として、世界遺産に登録されてから20年を迎えた今年、改めて注目が集まっている。
和歌山・田辺から続く中辺路(なかへち)、奈良・吉野から向かう大峯奥駈道など6つあるルートのうち、伊勢神宮から続く伊勢路は唯一、三重を通る道。「伊勢へ七度、熊野へ三度」と「東海道中膝栗毛」にも書かれたように、とりわけ江戸時代に人気を誇った参詣道は、今も往時の姿を残し受け継がれている。連なる石畳や青々とした木々、熊野灘を一望する峠、眼下に見る棚田と移り変わる多彩な景色も、伊勢路ならではの魅力だ。坂本美雨さんが足を運んだのは、全長約170㎞の伊勢路の中ほどにある『馬越峠』。紀北町から尾鷲市へと続く、約2・2㎞の道のり。国道のそばにある入り口を上がれば、たちまちタイムトリップしたような気持ちに。「折り重なるように続く石畳が苔むす様子や、すっと伸びたヒノキからの木漏れ日の美しかったこと。昔の人もこの景色を眺めながら歩いたのだと思うと心が温かくなりました」と坂本さんは振り返る。石の橋を渡り、かつて人々が旅の安全を祈願した石仏にも手を合わせつつ歩き終えれば、心地よい疲れとともに心が晴れやかになる。
山歩きのお供にしたいのは、三重県南部から和歌山県にかけて作られる、さんま寿司。回遊魚のさんまが東紀州で獲れる頃には、程よく脂も落ちて身も締まっている。そのさんまを酢で〆た、素朴な郷土料理だ。
熊野三山のうち熊野本宮大社と熊野速玉大社の間には、川の参詣道と呼ばれた熊野川が流れている。平安や鎌倉時代には参詣道として人々を運び、後に昭和30年代までは物資の運搬に使われた川舟を体験できるのが『熊野川体感塾』の川下り。川面を滑るように走る、3枚の帆を持つ三反帆からの眺めはまた新鮮なもの。
海、山、川と雄大な自然が残る東紀州ならではの世界遺産に触れるため、次に坂本さんが向かったのは熊野の地。『花の窟神社』は伊弉冉尊が葬られた御陵であり、日本最古の神社ともいわれる古からの聖地である。ご神体は高さ45mもの大きな岩で、現代に至るまで社殿がないことも太古の自然崇拝を思わせる。目の前に広がる『七里御浜海岸』沿いには、巨大な獅子が海に向かって吠えるような姿の『獅子岩』、熊野灘の荒波に削られた海蝕洞が連なる『鬼ヶ城』と、次々と現れる奇岩巨岩はまさに圧巻。七里御浜海岸では滑らかな石に触れ、海岸に大の字に寝そべって波の音に耳を傾けた坂本さん。「グランドキャニオンを思い出すほどに迫力ある鬼ヶ城をはじめ、見るものすべてが大きくてドラマチック。冬でも暖かくて、青い海と空を眺めた海岸での時間も心地いい。岩と石に触れ、自分自身も自然に還る、そんな気持ちになりました」
熊野古道伊勢路に沿って南へ。人々の信仰心が育んできた歴史や文化に触れ、大切に守られてきた大自然が残る東紀州を巡る旅。「巡礼の地としての熊野三山や熊野古道には、少し畏れ多いイメージがありました。けれど聖地を目指した人々の思いをなぞるように祈りの道を歩き、豊かな自然に触れることで、その印象はがらりと変わりました。まだ出合っていない三重の魅力はほかにもあるはず。もっと、深く知りたいと思う旅でした」
三重県南部の東紀州エリア。北から南へ、紀北町、尾鷲市、熊野市、御浜町、紀宝町と5つの市町が連なっている。熊野古道『馬越峠』へはJR相賀駅、『さんき茶屋』はJR尾鷲駅、『鬼ヶ城』『獅子岩』『花の窟神社』『七里御浜海岸』へはJR熊野市駅が最寄り駅となる。『熊野川体感塾』に向かうなら、隣接する和歌山県のJR新宮駅から紀宝町町民バスを利用したい。とはいえ公共交通機関は本数がかなり限られており、借りられるレンタカーも少ないため、松阪市や伊勢市を起点にレンタカーで向かうのがおすすめ。
photo : Mai Kise text : Mako Yamato illustration : Junichi Koka 衣装提供:モンベル 提供:みえ観光の産業化推進委員会