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音楽家の坂本美雨さんと、クラフトマンシップの宿る、三重のものづくりを巡る。 &MIE vol.3January 19, 2024 / 〔PR〕

&MIE vol.3

音楽家・坂本美雨さんがまだ知られていない三重の魅力に触れる連載、第3回。
国内外から注目を集める焼き物の里・伊賀ではギャラリーと陶工房へ。
美しい山と川とに囲まれた奥伊勢では、豊かな自然が育む酒蔵を訪ねました。

『ギャラリーやまほん』は陶房の倉庫をリノベーションした空間。企画展のほか常設展示も見ごたえがある。「家では『圡楽窯』の土鍋を愛用中。ご飯を炊く土鍋にも憧れるよね」と迷いながら、連れて帰るものをじっくり選ぶ坂本さん。音楽家・坂本美雨さんがまだ知られていない三重の魅力に触れる連載、第3回。
『ギャラリーやまほん』は陶房の倉庫をリノベーションした空間。企画展のほか常設展示も見ごたえがある。「家では『圡楽窯』の土鍋を愛用中。ご飯を炊く土鍋にも憧れるよね」と迷いながら、連れて帰るものをじっくり選ぶ坂本さん。

訪れた人 坂本美雨

さかもと・みう/音楽家。精力的なライブ活動を続けるなか、昨年12月にEP『あなたがだれのこどもであろうと』をリリース。TOKYO FM『ディアフレンズ』パーソナリティなどのラジオ出演や著書『ただ、一緒に生きている』(光文社)も刊行。

Gallery Yamahon / Yamahon Toubou ギャラリーやまほん / やまほん陶房

窯に入るのを待つ陶器製おひつ「めしびつころりん」は『やまほん陶房』のプロダクト。伊賀の土の特性でご飯の水分を程よく吸収してくれる。
窯に入るのを待つ陶器製おひつ「めしびつころりん」は『やまほん陶房』のプロダクト。伊賀の土の特性でご飯の水分を程よく吸収してくれる。
『ギャラリーやまほん』にて。白磁輪線文飯は地元で作陶する柏木円の作品。
『ギャラリーやまほん』にて。白磁輪線文飯は地元で作陶する柏木円の作品。
ギャラリーに併設された『カフェ&ライブラリー ノカ』では、レアチーズケーキなどのデザートと飲み物を現代作家の器で楽しめる。ケーキ皿は山本忠正さんの作品。
ギャラリーに併設された『カフェ&ライブラリー ノカ』では、レアチーズケーキなどのデザートと飲み物を現代作家の器で楽しめる。ケーキ皿は山本忠正さんの作品。
『やまほん陶房』にて作陶する忠正さん。大学で木彫を専攻したのち、陶芸の道へ進んだ。自身の作品は土鍋などの土ものに加えて、型物で作る半磁器の匙なども。
『やまほん陶房』にて作陶する忠正さん。大学で木彫を専攻したのち、陶芸の道へ進んだ。自身の作品は土鍋などの土ものに加えて、型物で作る半磁器の匙なども。
「あまりの手際のよさに見惚れてしまいました」と坂本さん。
「あまりの手際のよさに見惚れてしまいました」と坂本さん。

伝統の技法から生まれるモダンな陶器を手に入れる。

 長い歴史を持つ伊賀焼の産地、伊賀市丸柱。生活に寄り添う現代作家の器や日用の道具、アートを扱い、その審美眼ゆえ高い知名度を誇る『ギャラリーやまほん』は、そののどかな山間の地にある。ギャラリーを主宰するのは陶房に生まれ育ち、建築家でもある山本忠臣さん。作り手の情熱やパワーが伝わってくる作品をセレクトする。ここでは江戸時代から土鍋を作る『圡楽窯』や、兄の忠正さんが営む『やまほん陶房』、城進や岸野寛ら気鋭の陶芸家の作品など、伊賀の地で育まれた器や道具に出合えるのも大きな魅力だ。
 ギャラリーから歩いて5分ほどの場所にあるのが『やまほん陶房』。昭和40年代に創業し、現在は2代目の忠正さんが先代から引き継いだ器と、個人としての作品を作る。「太古の昔、琵琶湖の底だった伊賀で採れる陶土は、焼成すると土の中に細かな空洞ができます。ここに空気が含まれるため、ゆっくり温まって具材へじっくり火を入れてくれるのです。それに火からおろしても冷めにくい」と忠正さん。蓄熱する性質を大切にし、土鍋や雪平鍋は伊賀の土だけを使うという。坂本美雨さんが訪れた日、忠正さんはご飯鍋をろくろで挽いて見せてくれた。「形が揃うあまり、型物と思われたことも」という忠正さんの言葉どおり、寸分たがわぬ鍋が作られてゆく様子はまさに職人技と坂本さんも感動しきり。
「器はインスピレーションを大切に、旅先で求めることも多いですね。作り手の顔が見えると、ものへの信頼も生まれるし愛情もひと際」と坂本さん。
 心にも暮らしにも、旅の余韻をもたらしてくれる器との出合いは、日々を豊かにしてくれるに違いない。

ギャラリーやまほん
やまほん陶房

ギャラリーには『カフェ&ライブラリー ノカ』、『ロカ ナチュラルマーケット』を併設。

▷『ギャラリーやまほん』三重県伊賀市丸柱1650 ☎0595−44−1911 11:00〜17:30(カフェ17:00LO) 火休 ▷『やまほん陶房』三重県伊賀市丸柱2053 ☎0595−44−1600 見学は問い合わせを。

Gensaka Sake Brewery 元坂酒造

明治時代の建物を基にした『元坂酒造』の酒蔵を見学する坂本さん。「温度管理が可能な建物を作るなど、人間の思惑を酒造りに持ち込みすぎず、その瞬間にしかないものが生まれることのほうが大事」と、この蔵を継ぐ元坂新平さん。
明治時代の建物を基にした『元坂酒造』の酒蔵を見学する坂本さん。「温度管理が可能な建物を作るなど、人間の思惑を酒造りに持ち込みすぎず、その瞬間にしかないものが生まれることのほうが大事」と、この蔵を継ぐ元坂新平さん。
蒸米を自然の冷気にあて、手作業で適切な温度まで冷ます。
蒸米を自然の冷気にあて、手作業で適切な温度まで冷ます。
左から蔵で最上級の純米大吟醸「酒屋 八兵衛 饌」。右側の3本は新平さんの代の日本酒。伊勢神宮のご神米のイセヒカリを使った純米大吟醸「常若」、自社で育てた無農薬栽培の酒米・伊勢錦の生酛造り「KINO/帰農」、契約農家が育てた伊勢錦を使った「KINO/帰農2」。「KINO/帰農」のラベルには蔵の持つ田圃の景色が。「すっと体に馴染んだのは『常若』、お米らしさを感じたのが『KINO』でした」と坂本さん。
左から蔵で最上級の純米大吟醸「酒屋 八兵衛 饌」。右側の3本は新平さんの代の日本酒。伊勢神宮のご神米のイセヒカリを使った純米大吟醸「常若」、自社で育てた無農薬栽培の酒米・伊勢錦の生酛造り「KINO/帰農」、契約農家が育てた伊勢錦を使った「KINO/帰農2」。「KINO/帰農」のラベルには蔵の持つ田圃の景色が。「すっと体に馴染んだのは『常若』、お米らしさを感じたのが『KINO』でした」と坂本さん。
大台ヶ原を源流に伊勢湾へと注ぐ宮川は幾度も日本一に輝く清流。
大台ヶ原を源流に伊勢湾へと注ぐ宮川は幾度も日本一に輝く清流。
熊野古道伊勢路沿いにある。
熊野古道伊勢路沿いにある。
タンクからは次々と発酵による泡が浮かび上がる。
タンクからは次々と発酵による泡が浮かび上がる。

トレーサビリティの確立で未来へと繋げる酒造り。

 県内に33ある酒蔵で最も南に位置する『元坂酒造』は、清流・宮川に抱かれて200年以上受け継がれてきた。「酒屋 八兵衛」を代表銘柄に、6代目の元坂新さんとともに、2020年からは息子の新平さん・彰太さん兄弟が杜氏として酒造りを担う。’21年からリリースする「KINO/帰農」は農業への回帰をコンセプトに、自ら育てた酒米・伊勢錦を使った生酛造りの純米酒だ。「戦後途絶えていたのを、父が復活させた伊勢錦。アイデンティティを模索するなかで改めて気づいたのが、稲作の営みの中で酒が造られてきたということ」と新平さん。5ヘクタールの田圃で酒米を育て、その米で酒を造る。「これまでの日本酒はどこまで米を磨いたかが大きな価値基準でした。けれどワインのように『この田圃で収穫した、こんな米の酒』と知ってもらえるようになれば、農業の価値も上がるはず」と未来を見据える。
 稲作と同時に、伝統製法にも目を向けている。「時代に合う、新しくも王道の味を目指したい。ポイントのひとつは、伝統的な生酛造りだと考えています。米と酵母を混ぜ合わせ、櫂で何百回もすり潰して米が酒へと変化する。つまり人間の介在が必要。そこには再現性がないからこそ、価値がある」
 新平さんの熱意に耳を傾ける坂本さんも、「同世代の方が、新しいアイデアを伝統に持ち込んでいることを知って嬉しい。音楽もそうですが、なぜこれを生み出すのかを意識されている方のものづくりというのは、やっぱり想いが詰まっていると感じます。川や田圃が近くにある自然の豊かさも素晴らしいですね。進化する酒蔵を、また数年後に訪ねてみたいと思っています」。

 

元坂酒造

創業は文化2(1805)年。代表銘柄の「酒屋 八兵衛」は6代目が手がけた。「KINO/帰農」は日本酒のブランディングに一石を投じ、造り手の想いが伝わる全国の酒販店50軒ほどで販売。

▷三重県多気郡大台町柳原346−2 ☎0598−85−0001 10:00〜17:00 土日祝休 酒蔵での購入可、見学・試飲は不可。

 

photo : Mai Kise text : Mako Yamato 提供:みえ観光の産業化推進委員会

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