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音楽家の坂本美雨さんと、一年の終わりに三重を心ゆくまで感じる宿へ。 &MIE vol.2November 20, 2023 / 〔PR〕

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音楽家・坂本美雨さんと三重の知られざる魅力を訪ねる連載、第2回。
それぞれの町で大切に育まれてきた風情や美食に浸るステイを求めて、
城下町の桑名と伊賀、”美し国”として知られる伊勢へと足を運びました。

『マルヨホテル』のある揖斐川ほとりの船馬町は木材で財を成した豪商が居を構えていた地。ダイニングとして使われる大広間の壁を飾るのは、現代美術家・堀尾貞治による絵画《千GO千点物語》。カップは陶芸家・内田鋼一の作品。三重 坂本美雨 旅 観光
『マルヨホテル』のある揖斐川(いびがわ)ほとりの船馬町は木材で財を成した豪商が居を構えていた地。ダイニングとして使われる大広間の壁を飾るのは、現代美術家・堀尾貞治による絵画《千GO千点物語》。カップは陶芸家・内田鋼一の作品。

訪れた人 坂本美雨

さかもと・みう/音楽家。昨年デビュー25周年を迎え、リリース、ライブ活動を精力的に行う。TOKYO FM『ディアフレンズ』パーソナリティ、『村上RADIO』などのラジオ出演や、著者として『ただ、一緒に生きている』(光文社)も刊行。

Maruyo Hotel マルヨホテル

和室に設けられたベッドルームには坪庭を眺める縁側がある。坪庭は黒い塀と苔とのコントラストが美しい。さりげなく置かれた椅子は、デザイナー・柴山益男によって昭和23年に作られた竹椅子。
和室に設けられたベッドルームには坪庭を眺める縁側がある。坪庭は黒い塀と苔とのコントラストが美しい。さりげなく置かれた椅子は、デザイナー・柴山益男によって昭和23年に作られた竹椅子。
フランスのアンティークガラスの扉が目を引く洋室のベッドルーム。奥に見えるのは廃棄されたトタンや金属片を用いて、自然の中にある経年変化に美を見いだすアーティスト・東亨による《てっかり》。
フランスのアンティークガラスの扉が目を引く洋室のベッドルーム。奥に見えるのは廃棄されたトタンや金属片を用いて、自然の中にある経年変化に美を見いだすアーティスト・東亨による《てっかり》。
ラウンジの壁に掛けられているのは、昔の土蔵の漆喰の扉が風化したもの。まるで抽象画のようだ。
ラウンジの壁に掛けられているのは、昔の土蔵の漆喰の扉が風化したもの。まるで抽象画のようだ。
「丸与木材」が創業時から使用してきたロゴを暖簾に。
「丸与木材」が創業時から使用してきたロゴを暖簾に。
三重を拠点にする陶芸家・内田鋼一による加彩瓶子はライブラリーに。
三重を拠点にする陶芸家・内田鋼一による加彩瓶子はライブラリーに。

今と昔が繋がれて交じり、 美に包まれる非日常の場所。

 東海道五十三次、42番目の宿場町として栄えた桑名。旅人はひとつ前の宮宿から船に乗り、七里の渡しと呼ばれる海路を経て旅を続けた。すぐそばには今も伊勢神宮の式年遷宮に合わせて建て替えられる一の鳥居があり、伊勢の国の玄関口でもある。その七里の渡跡の近くに立つのが『マルヨホテル』。明治に創業した「丸与木材」の築70年を超える本家をリノベーションした、一棟貸しのホテルだ。凛とした和の佇まいから一転して現れるのは瀟洒なラウンジ。「すっと非日常へと誘ってくれる」と坂本美雨さんも笑顔に。
 当主は創業者の玄孫にあたり、パリで日本の美を伝えるサロン『MIWA』を営む佐藤武司さん。インテリアやアートのディレクションは、武司さんの妻であり、名古屋を拠点にギャラリストとして活躍する正木なおさんが手がけた。近くに残る大正時代の洋館・六華苑をオマージュした洋室。剥き出しの荒壁と窓の外の揖斐川沿いの景色が印象的なダイニングルーム。土壁とアンティーク家具に包まれるようなラウンジ。黒漆喰の床の間がモダンさを漂わせるベッドルームと、そこに続く庭にしつらえた檜の露天風呂など、時代も和洋も入り交じる空間。そこに佐藤貢や堀尾貞治らの現代アート、江戸時代の杉戸絵や李朝燭台などの骨董、内田鋼一らの工芸品が加わり、上質なギャラリーで過ごすような時間が流れる。
「部屋ごとに印象ががらっと変わって、どれも美しい。とりわけ2階の大きな窓から見る川沿いの眺めに惹かれました」と、くつろぐ坂本さん。
 一日一組だけ。贅沢な空間での過ごし方は思いのまま。感性を刺激する美意識に、心ゆくまで浸りたい。

マルヨホテル

2020年10月開業。桑名の名物は蛤。徒歩圏内にある蛤鍋の名店『日の出』の料理やルームサービスなどの夕食が付くプランも。朝食は三重産の素材を使ったグラノーラなどの洋食。

▷三重県桑名市船馬町23 ☎090−2773−0004 1泊朝食付き2名利用¥33,000~(1名料金)。定員4名。

Auberge Yusura オーベルジュ ユスラ

「ついつい料理に夢中になってしまいました」と坂本さん。食事は夕食も朝食も、個室のある食事処で。
「ついつい料理に夢中になってしまいました」と坂本さん。食事は夕食も朝食も、個室のある食事処で。
伊勢えび、本鮪、平目の造り。料理は松阪牛会席からの一品。器づかいも美しく、運ばれてくるたび坂本さんの目も輝く。
伊勢えび、本鮪、平目の造り。料理は松阪牛会席からの一品。器づかいも美しく、運ばれてくるたび坂本さんの目も輝く。
露天風呂は陶器の浴槽。榊原温泉はとろりと滑らかな湯で、清少納言も愛したと伝わる三重の名湯。
露天風呂は陶器の浴槽。榊原温泉はとろりと滑らかな湯で、清少納言も愛したと伝わる三重の名湯。
全5室のうち、2室は2022年に新設されたもの。まだ新しい、けやきの客室のベッドの上の窓からは、四季折々の自然の景色が眺められる。
全5室のうち、2室は2022年に新設されたもの。まだ新しい、けやきの客室のベッドの上の窓からは、四季折々の自然の景色が眺められる。
テラスのソファに座る坂本さん。温泉に入ってのんびりして、おこもり旅にもいい。ユスラの名は、山桃と桜の木が入り口にあることから名付けられている。
テラスのソファに座る坂本さん。温泉に入ってのんびりして、おこもり旅にもいい。ユスラの名は、山桃と桜の木が入り口にあることから名付けられている。

温泉付きのヴィラでくつろぐ 和のオーベルジュで口福を。

 美味なるものと美しい景色に出合える美し国、伊勢。両方を堪能できるのが二見浦の『オーベルジュ ユスラ』。
 夫婦岩で知られる二見興玉神社の程近く。広々とした敷地に立つ、プライベート感の高いヴィラタイプの客室が5組限定のゲストを迎えてくれる。けやき、ひのき、かえで、さくら、とちと、部屋の名に付けた木材をふんだんに使った部屋は、それぞれに異なる趣で温もりを感じさせるしつらえ。庭の眺めや、美肌の湯で知られる榊原温泉の湯を露天風呂で楽しめる。
 ホテルは居心地を重視して選ぶという坂本さん。「1部屋ずつが独立していて、ゆったりと落ち着けるのがなにより。どのお部屋にも和室があるから、子どもも楽しいし安心です。開放感のある露天風呂も魅力」
 オーベルジュの主役となる料理は、三重のブランド牛・松阪牛や伊勢湾で獲れたての魚介類、豊かな自然に育まれた旬の野菜をふんだんに使い、伝統的な日本料理で。伊勢えびの刺身、あおさのりを寄せたあおさ豆腐、とろけるような霜降りの松阪牛の焼き物と、三重ならではの美味が会席仕立てで登場する至福のひととき。
「鮑とじゅんさいの組み合わせや、伊勢えびに添えられた泡醤油の食感も新鮮で、おいしくいただきました。とりわけ土鍋で炊かれた、とうもろこしご飯はあっという間に食べてしまったほど。三重の食の豊かさを、改めて実感することができました」と坂本さん。
 伊勢神宮の内宮までは車で15分ほどというロケーションで、泊まった翌朝は参拝を済ませてから朝食というのも、伊勢ならではの過ごし方。美し国を存分に満喫できるステイだ。

 

オーベルジュ ユスラ

2018年開業。全5室。料理は松阪牛コースのほか、鮑ステーキコース、伊勢海老コースなどがある。朝は旬の地魚の炙りや熱々のだし巻きなどを土鍋ご飯とともに味わう和朝食。

▷三重県伊勢市二見町松下1347−2 ☎0596−63−5511 1泊2食付き2名利用¥55,000~(1名料金)。

 

Nipponia Hotel Igaueno Jokamachi ニッポニアホテル 伊賀上野 城下町

KANMURI棟は築150年の建物を再生したもの。武家屋敷の入交家住宅など風情ある建物が残る三之町通りに面する。
KANMURI棟は築150年の建物を再生したもの。武家屋敷の入交家住宅など風情ある建物が残る三之町通りに面する。
レストラン『ルアン』のランチ¥3,800から、とよさ豚のパイ包み焼き 味醂のソース、アスパラガスと山椒香る湯葉のサラダ、季節のポタージュ。内容は季節ごとに変わり、伊賀にある酒蔵の日本酒とのペアリングも用意されている。宿泊客以外の利用も可能。
レストラン『ルアン』のランチ¥3,800から、とよさ豚のパイ包み焼き 味醂のソース、アスパラガスと山椒香る湯葉のサラダ、季節のポタージュ。内容は季節ごとに変わり、伊賀にある酒蔵の日本酒とのペアリングも用意されている。宿泊客以外の利用も可能。
KANMURI棟にあるroom101では、くつろぎながら庭を眺める縁側での時間を。
KANMURI棟にあるroom101では、くつろぎながら庭を眺める縁側での時間を。
ユニークなデザインの障子は建てられた当時のまま。
ユニークなデザインの障子は建てられた当時のまま。
門を入ってまず目にする庭は、藤棚やザボンなど多くの植物に彩られている。夜にはライトアップも。
門を入ってまず目にする庭は、藤棚やザボンなど多くの植物に彩られている。夜にはライトアップも。

城下町をホテルに見立て、 逍遥へと誘う仕掛け。

 忍びの里として知られる伊賀上野は400年の歴史を持つ城下町。伊賀上野城を中心に藤堂高虎が整備した碁盤の目の町並みは、今も風情を漂わせている。「まち=ホテル」をコンセプトに、3棟の古民家を宿にしたのが『ニッポニアホテル 伊賀上野 城下町』。町全体を緩やかに敷地に見立て、宿に滞在しながら伊賀上野の歴史ある地を体感する、分散型のホテルだ。
 国の登録有形文化財でもあるかつての料理旅館は、レストランと客室を備えたフロント棟・KANMURIに。客室は蔵を改装したもの、茶室を持つものと、部屋ごとにがらりと異なるしつらえ。壁や窓にあしらわれた柾割竹の装飾、急須をかたどった襖の引き手の意匠などは昔のままの姿を残し、檜風呂やモダンな家具、寝具などで快適さと機能性が加えられている。津へと続く伊賀街道の起点に立つ、広々とした中庭を持つ町家はKOURAI。鍔型の虫籠窓や親子格子の外観がひと際印象的な、明治初期の元材木店はMITAKE。伊賀の伝統工芸品・伊賀くみひもの編み方の名が付けられた3棟が、それぞれに異なる趣でゲストを迎えてくれる。
 山あいの伊賀で育まれた地の恵みを味わうのもまた、大いなる楽しみ。幻ともいわれる伊賀牛をはじめ、生産者から直接買い付ける野菜、川魚まで地元食材をふんだんに。ディナーはフレンチの技法で仕立てるイノベーティブな料理をコース仕立てで。朝食では土鍋で炊く伊賀米のご飯を中心に、郷土料理の豆腐田楽や地元酒蔵の酒粕を使った粕汁など、ご飯のお供が揃う和食を。伊賀焼の器や、ゆらめくガラスの向こうに広がる庭の眺めが、より一層、味わいを引き立ててくれる。

ニッポニアホテル
伊賀上野 城下町

2020年11月開業。全10室。宿泊時はもちろん、レストランだけの利用も可能。

▷三重県伊賀市上野相生町2842 0120−210−289 1泊2食付き2名1室¥30,690~(1名料金)。レストラン『ルアン』 11:30~15:00(14:00LO) 17:30~22:00(20:00LO) 不定休

photo : Mai Kise text : Mako Yamato 提供 : みえ観光の産業化推進委員会

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