LIFESTYLE ベターライフな暮らしのこと。
〈CHICU+CHICU 5/31〉主宰、山中とみこさんの住まい。 「今の自分」に合わせて、住まいを変化。&Interior 01 / October 30, 2021
2021年10月7日発売の特別編集MOOK「&Interior / 住まいを、整える」。これまで、狭くても古くても、ものが多くても、心地よくくつろげる暮らしは実現できるという思いから、素敵な住まい手の皆さんを取材してきた『&Premium』の中から、この2年で登場した33組のBetter Lifeな実例と、建築家やインテリアのプロと考えた、整えながら「収める」「飾る」方法についてを一冊にまとめました。ここでは、普段着のレーベル〈CHICU+CHICU 5/31〉を手がける、山中とみこさんの住まいを紹介します。
段階的なリフォームで、理想の住まい方にたどり着く。
築45年超のマンションの最上階、周囲に視界を遮るものはない。リビングの大きな窓にはカーテンをつけたことがないそうだ。眼下に広がる四季の緑が庭の景色の代わり。白い壁と天井、こざっぱりとしたラワンベニヤの床に、質実な古い家具とグリーン、さりげなく飾られた小物。開放感と、明るさと、古い建物特有の包容力を感じて居心地がいい。
22年前にこの家に引っ越してきたとき、山中とみこさんは息子2人を育てている最中。パート勤務から古道具店店主、青森での介護などを経験して、現在手がける普段着のレーベル〈CHICU+CHICU 5/31〉につながる服作りを始めようとしていた。「当時はヴィンテージマンションという考え方はなかったのですが、昭和の建物ならではの金属製のスイッチパネルや、素っ気ないサッシの枠や窓のつくりは気に入っていました。ただ、男の子って収集癖があるでしょう? 4人で暮らしていたときは、収納が少なくて大変でした。仕切りの多い和風の間取りを変えたいという思いは最初からあって、住みながらここをこうしたらいいな、と思い描いていました。お金をあまりかけず、最初はハンドメイドから」。引っ越して2年後、友人の手を借り、和室とダイニングをつなげて現在のリビングに。床を板張りにし、天井と壁を白く塗り替えた。やがて子どもの独立に合わせ、4畳半の和室を自分の寝室兼アトリエに。9年前にキッチンや床の大がかりなリフォームを行い、現在の形になった。
「ようやく自分好みに飾れるようになりました」と語る山中さんには、自分なりのしまい方、物の置き方のルールがある。「綺麗だけど何もない、というのは苦手だけれど、あんまりごちゃごちゃさせたくはない。隠せる場所を用意して、空いたスペースをディスプレイにしています。例えば、白いものとガラスは目に見えるところに出しておいても圧迫感がなく、規則正しく入れなくても視界を邪魔しません。代わりに、色のある陶器や漆器は隠して収納します。それから私は古いものもハンドメイドも好きですが、そういうものは置き場所を考えます。古いものばかりが目に入ると、重い印象になってしまう。手作りのざっくりした質感も、重ね合わせると汚く見えてしまいがちです。そういう意味では、9年前のリフォームで、壁や床の仕上げをプロにやり直してもらったのも良かったですね」
味わいがありながらスタイリッシュ、調和のとれた空間は、変化を経てたどり着いたこの家の理想形という感じがする。「私には所有意識というものがなくて、その時を素敵に暮らせればいいという感じ。だから、今がちょうどいいですね」。時間をかけて築いた考え方、生き方が、住まいにあらわれていた。
22年前にこの家に引っ越してきたとき、山中とみこさんは息子2人を育てている最中。パート勤務から古道具店店主、青森での介護などを経験して、現在手がける普段着のレーベル〈CHICU+CHICU 5/31〉につながる服作りを始めようとしていた。「当時はヴィンテージマンションという考え方はなかったのですが、昭和の建物ならではの金属製のスイッチパネルや、素っ気ないサッシの枠や窓のつくりは気に入っていました。ただ、男の子って収集癖があるでしょう? 4人で暮らしていたときは、収納が少なくて大変でした。仕切りの多い和風の間取りを変えたいという思いは最初からあって、住みながらここをこうしたらいいな、と思い描いていました。お金をあまりかけず、最初はハンドメイドから」。引っ越して2年後、友人の手を借り、和室とダイニングをつなげて現在のリビングに。床を板張りにし、天井と壁を白く塗り替えた。やがて子どもの独立に合わせ、4畳半の和室を自分の寝室兼アトリエに。9年前にキッチンや床の大がかりなリフォームを行い、現在の形になった。
「ようやく自分好みに飾れるようになりました」と語る山中さんには、自分なりのしまい方、物の置き方のルールがある。「綺麗だけど何もない、というのは苦手だけれど、あんまりごちゃごちゃさせたくはない。隠せる場所を用意して、空いたスペースをディスプレイにしています。例えば、白いものとガラスは目に見えるところに出しておいても圧迫感がなく、規則正しく入れなくても視界を邪魔しません。代わりに、色のある陶器や漆器は隠して収納します。それから私は古いものもハンドメイドも好きですが、そういうものは置き場所を考えます。古いものばかりが目に入ると、重い印象になってしまう。手作りのざっくりした質感も、重ね合わせると汚く見えてしまいがちです。そういう意味では、9年前のリフォームで、壁や床の仕上げをプロにやり直してもらったのも良かったですね」
味わいがありながらスタイリッシュ、調和のとれた空間は、変化を経てたどり着いたこの家の理想形という感じがする。「私には所有意識というものがなくて、その時を素敵に暮らせればいいという感じ。だから、今がちょうどいいですね」。時間をかけて築いた考え方、生き方が、住まいにあらわれていた。
PROFILE
山中とみこ 布作家〈CHICU+CHICU 5/31(ちくちくさんじゅういちぶんのご)〉主宰
専業主婦、古道具店店主、小学校特別支援学級の補助職員などを経て、2003年からレーベルをスタート。著書『時を重ねて、自由に暮らす』(X-Knowledge)。
photo : Shinnosuke Yoshimori text : Azumi Kubota