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Book 111 / April 13, 2018 『ODESSEY 1966~2005 岡田史子作品集 episode 1ガラス玉 増補新装版』岡田史子(復刊ドットコム) 選・文/LVDB BOOKS

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高校生のころに永島慎二の『漫画家残酷物語』にショックを受けた岡田史子は「マンガでこんなことをしていいのか」と思い「それまでの少女マンガをみんな燃やしてしまいました」と証言する。手塚治虫の漫画雑誌『COM』に10代から関わるほど早熟で周囲からも期待されていた岡田史子だったが、ふとしたきっかけで生活のバランスを崩し自殺未遂を図る。そのとき偶然行動をともにしていた編集者の男性に、恋愛関係がなかったにもかかわらず「死にきれなかったら結婚しないか」と告白される。死を覚悟していた彼女は承諾する。2人は一命をとりとめ、結婚する。事実は過去完了形で淡々と語られる。岡田史子は生き残った。


Book 110 / April 06, 2018 『SET (Revised Edition)』Na Kim(Roma Publications) 選・文/LVDB BOOKS

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『The Book Society』『Art Sonje Center』『Common Center』など、ソウルで見つけた魅力的なスペースにはことごとくグラフィックデザイナーのナ・キムが関わっていた。子どものような遊び心のある色づかい。アドビ製品を使ってマウスで試行錯誤しているだけではなく、楽しみながら指で工作している姿が想像される。アーネムのデザイン学校「Werkplaats Typografie」に通い、オランダのグラフィックデザインの大家カレル・マルテンスに師事した彼女は、アルファベットとハングルの文字を等価的に扱う韓国デザインの新たな地平を切り開いた。ユニークなアーティストブックを制作している〈Roma Publications〉から出版された本作品集はナ・キムの思考を辿る貴重な記録となっている。


Book 109 / March 30, 2018 『境界線13』頭山ゆう紀(赤々舎) 選・文/LVDB BOOKS

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頭山ゆう紀の写真集『境界線13』のタイトルに含まれる「境界線」という言葉を「Borderline」だと思っていた。あらためて本書奥付の英文を確認すると「Line13」ときっぱりと表記されていた。紐のように繊細な線が静かに紙面に浮上する。こことよそを分かつ線はあまりに不明瞭でだれもがふとしたはずみで足を踏み入れてしまいそうだ。境界線という言葉によって通常喚起される彼岸の領域ではなく、より親密な内側の縁にこの写真集はわたしたちを呼び込む。雨が降る幹線道路、畳のイグサ、動物園のキリンの檻に張られたロープ、切り落とされた髪の毛……直線的に伸びるものの境界。荷物を引きずりながら駅のプラットフォームに向けて一段ずつ階段を下る小学生の背中。


Book 108 / March 23, 2018 『エクソフォニー 母語の外へ出る旅』多和田葉子(岩波現代文庫) 選・文/LVDB BOOKS

多和田葉子は22歳の時にドイツに渡った。彼女は文字通り日本語とドイツ語の境界を行き来するようなスタイルを築き上げた。1991年に群像新人文学賞を受賞するが、驚くべきはそれに先立ちドイツですでにドイツ語の小説を発表していたということ。日本語の小説家である以前にドイツ語の小説家であった。彼女の言語観を如実に反映する2003年に発表された『エクソフォニー』というエッセイ集には「母語の外へ出る旅」という副題が添えられている。言葉の海を泳ぎ回る著者が鱗で感じとった世界のさまざまな都市さまざまな土地の言語状況。第一部の章は多和田葉子が実際に訪れた都市の名前に由来する。「町は彼の言語、小路は彼だけが知りつくした文法」。


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