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選・文 / 曲線 / April 14, 2022 本屋が届けるベターライフブックス。『白昼のスカイスクレエパア』北園克衛 著 (幻戯書房)

This Month Themeセンスが磨かれる本。

北園克衛

戦前の前衛詩を牽引し、建築・デザイン・写真などにも精通したモダニズムの詩人、北園克衛が1930年代に試みた短編小説集。その魅力は、いつの時代も色褪せることがありません。真昼の高層ビル、珈琲店、ショーウィンドウのマヌカン、インキ瓶の中に沈む街——。詩人の目を通して見えるのは、うっとりするほど美しくメランコリックな世界の断片。そして、新しい時代のリズムとムード。
非現実の空間にオブジェを配置するように綴られたこれらのイメージは、まるでキリコの絵画のよう。彼の美学をかたちにしたような、余白が美しい装丁です。


選・文 / 曲線 / April 07, 2022 本屋が届けるベターライフブックス。『文体練習』レーモン・クノー 著 朝比奈弘治 訳 (朝日出版社)

This Month Themeセンスが磨かれる本。

文体練習

20世紀フランス文学の革命を牽引したレーモン・クノーによる、究極の言語遊戯。バスで見かけた男についての他愛もないストーリーが、99通りの異なる文体で書き分けられている(だけの)驚異的なこの本は、たったひとつの些細な出来事にこんなにも膨大な視点があることに驚かされます。姿を変え、フーガのように繰り返され、次々に印象が変化していくストーリー。文体や文章というものの本質を明らかにするとともに、音楽や映画を体験しているような感覚をももたらします。見事な編集手腕と、途方も無い翻訳センスにため息がでます。


選・文 / 曲線 / March 31, 2022 本屋が届けるベターライフブックス。『すべての雑貨』三品輝起 著 (夏葉社)

This Month Themeセンスが磨かれる本。

すべての雑貨

東京・西荻窪にある雑貨屋FALL。店主の三品さんが座る小さなレジの中から繰り広げられる、“雑貨化”していくすべてのものへの緻密な地図を広げていくような論考。より良い方へと前進を夢見て、絶え間まく消費を続ける私たち。素敵だと思う感覚の出所すら辿れないまま、それでも何者かになろうとして必死にどこかへ向かっている。雑貨に取り憑かれ、雑貨に翻弄され、雑貨に押しつぶされそうになりながらも雑貨に魅了されている著者。その狂気的ともいえるセンスの片鱗が垣間見られるエッセイです。


選・文 / 曲線 / March 24, 2022 本屋が届けるベターライフブックス。『千夜曳獏』 千種創一 著 (青磁社)

This Month Themeセンスが磨かれる本。

千夜曳獏

「話し足りないというのは美しい感情だ」。 冒頭のこの一文のために本書を手にする意味があるように思える、作者が中東在住時につくられた歌集。静謐で儚いシーンが立ち現れては消える、短い映画を観ているような362首。まるで縋るように綴られた歌は、濁流に飲み込まれそうな私やあなたに手を差し伸べ、弱々しくとも確かな生のぬくもりを伝えてくれます。読み終わったあと、少しだけ背筋がまっすぐになるその感覚は、「磨かれた」というものかもしれません。乾いた砂のような手触りの造本が美しい一冊です。


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宮城県仙台市にある築120年を超える建物を店舗とした本屋。市内の中心部から少し離れた商店街の小径を入り、石畳の道を進んだ先に立地している。新刊書のほか、古書やZINE、CDなどの取り扱いも。本のラインナップと親和性の高いイベントや展示も開催している。
住所:宮城県仙台市青葉区八幡2-3-30
営業時間:12:00-19:00
定休日:火・水曜

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Latest Issue花を飾る、緑と暮らす。2022.04.20 — 880円