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Book

Kita Shoten 北書店


Book 23 / May 13, 2016 『エフスタイルの仕事』エフスタイル(五十嵐恵美+星野若菜)(アノニマ・スタジオ)

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職人の技術に敬意を払い、デザインや販路の開拓に自ら取り組むことで新潟から全国に発信、地場産業の販売方法に新風を吹かせた「エフスタイル」の仕事ぶりが詳細にまとめられている。本書の発売は8年前、当時の事務所兼アトリエはいまは無く、彼女たちを取り巻く環境にも変化はあるだろうけど、移転して驚くほど規模が拡大したアトリエに行けば、この本の根っこの部分同様に、今も拍子抜けするほど変わらぬ佇まいの2人が出迎えてくれる。エフスタイルが「お店」の顔を覗かせるのは週に2日、年々、全国各地の展示会に引っ張りだこで、旅から旅の旅ガラスになっていく彼女たちと、毎週のように接することのできる町。北書店入り口の郷土本の棚には、いつでもこの本が置いてある。


Book 22 / May 06, 2016 『タイポさんぽ改 路上の文字観察』藤本健太郎(誠文堂新光社)

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街角で見かける一風変わった書体の看板をグラフィックデザイナーの視点で検証する、まさに散歩のお供な1冊。ここ数年品切れ状態だったので、改訂版の発売は朗報だった。著者がデザインの学校に進学し、そのままプロの現場に舞台が移っていく90年代、アナログ的なものが排除される時代の雰囲気や、その便利さゆえに画一化されていくことに対する違和感。そんなときに、目に飛び込んできた面白書体の看板たちに惹かれていったという経緯にも共感できる。よくわからないお店だけど看板の書体に惹かれて、とりあえず入ってみることは、本屋の店頭で知らない作家の本の装丁が気になって思わずジャケ買いしてしまうことと似ていて、どちらも楽しい行為だ。その先には案外面白い世界が待っている。


Book 21 / April 29, 2016 『村上朝日堂 はいほー』村上春樹(新潮文庫)

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平成元年に単行本が発売された、昭和の終わり頃の春樹さんの身辺雑記。「うさぎ亭」という定食屋のコロッケを、愛情たっぷりに綴る「うさぎ亭主人」は、読む人のコロッケ観を一変させるインパクトがある。ご主人の佇まい、脇を固めるせんぎりキャベツにしじみの味噌汁、付け合せはスパゲティーの酢味噌和え、これらの描写がまた事細かで、“思わず大地に頬ずりしたくなるようなにおいたつじゃがいもと、牛肉以外にはなにも入っていない”というコロッケの魅力がさらに際立つ。「うさぎ亭」はどこにあるのか?初出から約30年、検索でたいていのことはわかる時代になったいまも尚、幻想に包まれた夢のコロッケ定食。ある意味贅沢な探しものである。


Book 20 / April 22, 2016 『ガケ書房の頃』山下賢二(夏葉社)

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このサイトにたどり着いている時点で、京都の〈ガケ書房〉をご存じないなんて方はまずいないと思うが、つい先日発売されたこの本が、とにかく感動的だったことだけを伝えたい。店主山下さんの幼少期のエピソードや、10代で京都を離れてからの様々な経歴を振り返る前半部分、2004年のガケ書房誕生から2015年の閉店までの濃密な日々と、どこをとっても最高に面白い見事な構成。「いい店に出会える本」というお題から思いっきり逸れているかもしれないが、「そこがいい店なのかどうかは自分次第」と、読者がそれぞれに感じ取ればいいのではないか。山下さんの物語は「ホホホ座」となって継続中である。


Kita Shoten 北書店

2010年4月、新潟市中央区に開店。北書店の「北」は、店主がかつて在籍した同市の老舗書店「北光社」に由来する。この春で開店6周年、店主の書店歴は今年で通算20年。▷新潟県新潟市中央区医学町通2-10-1 1F
http://kitashoten.blogspot.com/