土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/坂本美雨 vol.4 | Music | & Premium (アンド プレミアム)

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Music土曜の朝と日曜の夜の音楽。

June 26, 2020 土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/坂本美雨 vol.4

June.26 – July.02, 2020

Saturday Morning

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Title.
春風
Artist.
森ゆに
尊敬する作曲家、歌手で友人であるゆにちゃんの声は、身体の中を吹き抜けていく。滞っていたものを流し、呼吸を浅くしていた重圧をふわっと持ち上げてメリーポピンズのように浮かせてくれる。コロナ自粛期間中、毎日この曲だけをリピートし、どれだけ助けられたことか。心の底から歌いたい気持ちをすくいあげて放ってくれる。彼女と、旦那さんの田辺玄さんが住む甲府の自宅兼スタジオからは、甲府の街並みが見渡せ、目の前の富士山は季節や時間帯によって様々な表情を見せる。その穏やかな空気、彼らがあの家で丁寧に積み上げた日常を私は愛していて、二人と二匹の猫たちが今日もあそこで暮らしている、と想うだけで心が落ち着くのだ。週末の朝、ゆにちゃんの声と自分の声を重ね合わせて身体の窓を開け、風を通す。
アルバム『山の朝霧』収録。

Sunday Night

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Title.
Inscape
Artist.
原 摩利彦
映画、舞台、展示の音楽など様々な場所で響く音を手掛けるアーティストの原摩利彦の久しぶりのオリジナルアルバム『Passion』に胸打たれた。坂本龍一に影響を受けてきた彼の旋律を、同じ音楽的血が流れている自分が心地よく感じるのは当然の流れかもしれないが、穏やかな音の海の水平線には静かな決意を湛えているように感じられる。一粒一粒が意志のある音であり、安易に雰囲気的に追加された音などひとつもない。自分は歌に真摯に向き合っているのかと、背筋の伸びる思いだ。なかでも「Inscape」という曲は彼が16歳の時に書いた曲だという。同じ頃19歳だった私は「in aquascape」という曲の歌詞を書いた。地球の、宇宙の、大きな愛に包まれ生きていくことが人間としての幸せだと十代なりに感じていたことを書いた。心の風景、という意味合いでつけられたタイトルだろうか、「Inscape」の美しいメロディーを聴いてその時のことが蘇った。まだ人生経験も少なく、心をぷるぷる震わせ、けれど音楽をやっていく覚悟だけは抱いていた自分はまだ変わらずそこにいて、“彼女”を決して見失うことなく歩んでいくことがこれからは必要なんだ、と、16歳の原さんの旋律が教えてくれた。
アルバム『Passion』収録。




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ミュージシャン 坂本美雨

5月1日生まれ。音楽に囲まれNYで育つ。1997年、Ryuichi Sakamoto featuring Sister M名義でデビュー。以降、本名で活動を開始。幅広いジャンルのミュージシャンとの共演などの音楽活動に加え、TOKYO FMを始め全国ネットのラジオ番組「ディアフレンズ」のパーソナリティを2011年より担当。村上春樹さんがDJを務める番組「村上RADIO」でも共にパーソナリティを務める。おおはた雄一さんとのユニット「おお雨(おおはた雄一+坂本美雨)」待望のファーストアルバム『よろこびあうことは』が2020年6月11日にリリース。動物愛護活動に長年携わり、著書『ネコの吸い方』(幻冬舎)や愛猫“サバ美”が話題となるなど、"ネコの人"としても知られる。2015年第一子を出産し、娘との暮らしも日々発信中。
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