Water 南アルプス「水の山」通信
山梨・北杜より南アルプスの自然が詰まったハチミツ。vol.10 / August 18, 2017
南アルプスの山々を見ていると、雄大な姿に心を奪われる。しかし、自然は大きな山だけではない。足を止めて、小さな花に目をやる。すると、花の蜜を集めているミツバチの姿に気づく。地上は小さな営みに満ちているのだ。そういえば、木が根から吸い上げて花に届いた水が蜜には含まれている。どんな味がするのだろう? 白州町の養蜂家の元を訪れた。
「うちのハチミツを買うお客様は、他の場所で採れたものと比べて『すっきりしている』と言う方が多いんですよね」
透明感のあるハチミツを見ながら八ヶ岳蜂蜜の金井宣之さんは微笑んだ。やはり土地の水と関係しているのだろうか。
「ハチミツの採れる場所はすごく大切です。水がきれいであれば、土もきれい。花もいいものができる。味がすっきりしていると言われる理由は、土地や水と大きな関係があると思いますね」
金井さんが養蜂箱を置く、ヒノキ林の中の養蜂場に連れていってもらった。私たちが巣箱に近づくとミツバチが一匹、耳元で羽音をうならせて威嚇してきた。
「こういうときはいったん、巣から遠ざかるとハチも落ち着きます」と言ってハチが静かになると、蓋を軽くノックした。警戒心からハチが巣の下の方に潜っていくので、取り出しやすくなるのだ。
金井さんが蜜蝋を切り取って手渡してくれた。採れたてのハチミツはまるで濃厚な花の水。土は水を吸い、花がそこで育つ。その花の蜜からできたハチミツは、南アルプスの大自然が凝縮されていた。