Water 南アルプス「水の山」通信
山梨・北杜より南アルプスの恵み、〈七賢〉の新しい酒造り。vol.4 / February 19, 2017
山梨の銘酒「七賢」。北杜市白州町で唯一の造り酒屋だ。長野で酒造業を営んでいた本家の7代目が白州の水の良さに惚れ込み、甲州街道台ヶ原宿に酒蔵を起こした。清らかでキレのある味は、全国の左党にファンを持つ。
醸造蔵は神聖な場所。特に仕込みの時期である冬は近寄りがたい……というイメージがあるが、〈七賢〉は冬期(10~3月)も酒造見学ができる。
「造りの世界を、もっと身近に感じてほしいんですよ」と醸造責任者の北原亮庫さんは言う。
酒蔵の母屋は1835年に建てられたものだが、設備は最新の酒造りの考えを用い、合理的に構成されている。
「仕込み時期は休みなしで造りっぱなし……という昔のスタイルではありません。忙しいときほど、きっちり休んでリフレッシュしてほしい。酒はシンプルな飲み物なので、造る人の状態が出ますから」
歴史は300年以上あるが、その考えは日々更新されている。「七賢」は古くても新しい、洗練された酒なのだ。仕込み水は南アルプスの伏流水。1999年には農業法人を設立し、地元の農家たちと酒米生産グループを結成した。地元の水と米にこだわった酒を造っている。
亮庫さんが「香りを楽しんでほしい」と、ワイングラスに酒を注いでくれた。創業者の名を付けた大吟醸「中屋伊兵衛」をひとくち。体がふわっと風に包まれる。それは、南アルプスの自然を愛する人が醸した、やさしくも繊細な味だった。