イザベル・ボワノ、日本の手仕事を訪ねる旅。

岩手・盛岡のホームスパンのストール。精巧なパターンと、唯一無二の色合いの妙。イザベル・ボワノ、日本の手仕事を訪ねる旅。October 30, 2024

羊毛を手で染め、紡織するスコットランド発祥の織物、ホームスパンを手がける植田紀子さん。くるみや日本茜など染料となる植物のサンプルは瓶に詰められ、糸は木製の小管に巻かれる。彼女が生み出す鮮やかな色はもちろん、植物染色レシピノートのコレクションは圧巻。
羊毛を手で染め、紡織するスコットランド発祥の織物、ホームスパンを手がける植田紀子さん。くるみや日本茜など染料となる植物のサンプルは瓶に詰められ、糸は木製の小管に巻かれる。彼女が生み出す鮮やかな色はもちろん、植物染色レシピノートのコレクションは圧巻。

私の手芸愛を知る友人の勧めで、ホームスパンを作る植田紀子さんを訪れることに。盛岡の工房に着くと、彼女は私のためにわざわざ作ってくれたというお菓子を渡してくれた。彼女はきっと仕事について情熱的に語ってくれる、とってもエネルギッシュな人だとすぐにわかってワクワクした。まず驚いたのは「植物染色レシピノート」。天然染色の色彩を試すのが大好きで、この染料で染めるとこんな色合いになる、というのをひとつひとつ貼り付け、資料にしていた。新しいパターンも次々に生み出す。ホームスパンのほとんどは平織りや綾織りだが、彼女は経糸を1本飛ばして柄を作ることで表情を変えているそうだ。同時に教室で7人の生徒の指導もこなすとはパワフル!

作業姿を見ると、まるでピアニストがピアノを弾くように、手では糸が巻かれた小管の入った杼を左右に動かし、足ではペダルを操作する。織機が奏でる安心感のある音は、作品にリズムを与え、心地よさを添える。染色から糸紡ぎ、製織までを手作業で行うため、上質な織物を作るには最低でも1か月はかかる。複雑ながらも精巧なパターン、彼女のシグネチャーでもある唯一無二の色合い。仕事への熱意と垣間見える厳しさ。情熱をもって向き合うことが、どれほど人生を特別にしてくれるかを教えてもらった。「仕事への情熱がエネルギー」と語る彼女の手で染められ、織られたストールは、陽気で温かみのある日常のアクセサリーであると同時に、技術、伝統の結晶だ。

植田紀子Noriko Ueta

1977年より織物作家の下でホームスパンを学び、1984年に盛岡にて現在のアトリエを開き、染織教室もスタートした植田さん。スコットランドの伝統にならって、オーストラリア、ニュージーランド、北海道から取り寄せた質の高い羊毛を、地元の植物(コブナグサ、くるみ、ヨモギなど)で染色し、手紡ぎ、手織りで作る。奥行きのあるパターンと色が魅力。取り扱いは盛岡、仙台の『光原社』など。Instagramは@homespun_ueta.noriko

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Isabelle Boinot

フランス西部の田舎町、アングレーム在住のアーティスト、イラストレーター。繊細なタッチと柔らかな色使いが魅力。本誌ではパリを独自の視点で切り取った「パリいろいろ図鑑」を連載中。著書に『パリジェンヌの田舎暮らし』(パイ インターナショナル)など

instagram.com/isabelleboinot

illustration : Isabelle Boinot

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