ILLUSTRATION
9月の「今日1日を、このイラストと」。村崎さんの作品をまとめて振り返り。September 30, 2024

向こう側とこちら側で、踏切が開くまでをはにかみながら待つ時間。まばたきをするみたいに、シャッターを切る。

踏切をはさんで別れ際、どうせまた明日会うのに、覚えておきたい気がしてカメラを構える。

旅行先のベトナム・ダナンで見た風景から。海のある土地に訪れると、そこで暮らしている人々の日常を想いをめぐらせてしまう。

旅行先のベトナム・ダナンで見た風景から。ホイアンで目を惹くのはカラフルな壁の色。鮮やかな黄色に影が落ちて、異国の匂いがする。

旅行先のベトナム・ダナンで見た風景から。街のそこかしこにカフェがあり、人々の日常が溶け込んでいる。

旅行先のベトナム・ダナンで見た風景から。ブルーのポロシャツを着た学生たちがバイクに乗って下校する姿を見て、彼らの放課後に思いを馳せる。

旅行先のベトナム・ダナンで見た風景から。ゆるんだ空気とテラス席に吹くぬるい風。

旅行先のベトナム・ダナンで見た風景から。スーパーマーケットの入口に目を伏せて、眠っているようにも見える。

木漏れ日のふるリビング、汗かくオレンジジュースのグラス。

みずみずしさを分け合う。

放課後のグラウンドには日中とは別のルールがある。ルールとルールが交差していく。

休日のうちに、校舎は眠る。子どもには見せない静かな顔をしている。

空が青すぎるイオンの屋上は、ひとりでいるにはすこし心許ない。

いつかの友だちと、あったかもしれない記憶。

朝の電車内が明るくて、単語帳にも陽射しが差し込む。

校庭のフェンスの影に手をとらえられて、どこへも行けない夕暮れ。

駆けあがった先の屋上から見える景色。

どんな人の夜空にも花火はあがる。

秋の夜は豊か。肌寒さを楽しみながら、夜更かしをする。

波音のようなノイズに紛れて、ふるえて伝わる音がある。

宇宙でも随一のひと皿を求めて。

難事件の相談は、いつもの喫茶店から。

日々、自分の身体を観察しながら調整を重ねるすがた。

どこかの街にある映画館。

スペイン・トレドの教会。中庭を囲った回廊に差し込む明るい光。

ポルトガル・リスボンの夕暮れ。曇った空が少しずつ晴れていくところ。

波の上をゆく列車のあかり。

日付を超えてから、誰にも見つからないように家を出る。

暗やみにからだは溶けだすようで、抱えている秘密だけがかたちを保っている。

水面にゆらめく金色をすくって、町から月を盗んでしまう。
murasaki 村崎
イラストレーター。早稲田大学で日本文学を専攻。青山塾23-25期修了。
会社員として働きながら活動をしています。