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フランスのワークウェアを好きになったきっかけ。 写真と文:宇多悠也 (〈ウティ〉デザイナー) #2May 16, 2025
10代の頃、いくつかのフランス製のワークジャケットと出合った。
それまでは、色々なデザイナーが作る洋服にも興味があったけれど、この頃からフランスのワークウェアやミリタリーウェアにどっぷりとハマっていった。

フランスに何度も足を運ぶようになるにつれて、その熱は加速していき、今のものづくりのベースになっているように思う。
パリを訪れ始めた頃、何軒かの古着屋で、信じられないほどの量のモールスキンのジャケットやハンティングジャケットが、壁一面のラックに何段もかけられている光景を目にした。しかも、今では考えられない値段で売られていて、「フランスすごい!」と興奮したのを覚えている。
その時に手に入れたブラックモールスキンのジャケットは、今でもクローゼットにかかっている。
買い付けをしていた頃は、軍ものや古着の倉庫、フランス全土の蚤の市やディーラーのウェアハウスを、時間と体力のある限り回った。
最近は、通り道にある地方の蚤の市に立ち寄って、仲良いディーラーと食事をして見せてもらう程度だけど。

モールスキンのジャケットはすでに何十枚も持っているので、普段はあまり気に留めないが、この日は一枚のジャケットと目が合った。
それは、かなりリペアを施されたブラックモールスキンのジャケットで、かつての所有者が大切に着ていたのが伝わった。よく見かけるものとは、どこかバランスが異なり、自分の好みだった。
ディテールを見ていくと、1930〜40年代の、フロントに6つのボタンがついた古い年代のもので、内側には見覚えのあるタグもついていた。(通常は5つボタン。1920〜40年代のもので、ごくまれに存6〜7個ボタンのものも存在する。)
譲ってもらってからは、しばらくアトリエに置いたまま忘れていたけれど、ある日ふと目にして記憶が蘇り、自分のクローゼットやアトリエのアーカイブを探してみたら、モールスキンのジャケットが色々と出てきた。
その中に、年代も、ブランドも全く同じブラックモールスキンのジャケットがもう一枚あった。20年以上の時を経て、同じジャケットが2枚、僕の手元に集まったのだ。
意図して集めたわけでも、珍しいから買ったわけでもない。ただ、なんとなくバランスが好きで、自然と集まってきた6ボタンのモールスキンジャケット。
時間をかけて自分のクローゼットやアーカイブを探せば、まだ何枚も出てきそうです。笑
edit : Sayuri Otobe
〈ウティ〉デザイナー 宇多悠也
