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日本を代表する〈アンビエンテック〉や、〈細尾〉の新作コレクションも展示。世界の家具の祭典、ミラノサローネだより。写真と文:浦江由美子 (ライター、コーディネーター) #3May 22, 2025
ミラノ・デザイン・ウィーク中に新作を発表する、日本のデザイナーやメーカーは年々増えている。インテリアに日本らしさや日本のテイストを取り入れるというのは、ヨーロッパでもよく目にするようになった。
実際に、和紙やたたみ、ひのき、杉など日本の自然素材は世界中で見直され、機能的で飽きないデザインにも定評がある。
ミニマルなデザインを“ZEN”というカテゴリーで表現する人たちも多い。
ミラノサローネは、今年は2年に一度の「照明」の展示年。
日本からはポータブル照明のメーカー〈アンビエンテック〉が出展していた。LEDのコードレスの照明のあかりの質にこだわっていて、実力のあるデザイナーとのコラボレーションで雰囲気のある照明に仕上がり、注目が集まっている。

田村奈緒さんのデザインした「TURN」は世界中でコピーされているのを見かけるほど、誰が見ても素晴らしいデザイン。修理やメンテナンスにも力を入れていて、電化製品という枠を超えたロングライフを約束しているのも現代で好まれる理由なのだろう。
どこでも何でも蛍光灯で煌々と明るいというよりは、日本人は谷崎潤一郎さんの『陰翳礼讃』で書かれているような夜の情緒を感じるあかりのほうが好みだと思う。〈アンビエンテック〉のあかりから、そんなことを感じた。

以前、取材をさせてもらったデザイナー・吉添裕人さんも、火の揺らぎを現代的に再解釈した「hymn Pro」を発表。光源が強化され、灯籠のような雰囲気を保ちながら、これまでよりも4倍の明るさになっているのだそう。
ミラノサローネに出展後、ミラノ・ブレラ地区にショールームを構えた、京都で400年以上続く西陣織の〈細尾〉。現在、開催中の大阪・関西万博で、高松伸さん設計のパビリオンでも使用され、話題になっている。国内外の高級ブランドやホテルなどとのコラボレーションが進んでいるようだ。
着物が普段着でなくなったのは日本の大きな損失だったと、外国に住んでから特に思う。わたし自身も、親や祖母の代からの着物文化を拒絶した一人として情けなく申し訳なく思っている。

四季折々のモチーフとバリエーション、色鮮やかな染めと織りの技術。〈細尾〉はその歴史と伝統とともに、着物という反物を、世界のマーケットに進出させた革新的なブランド。
今年のミラノ・デザイン・ウィークではイタリアのデザイン会社『ディモレ・スタジオ』とともにヘミスフィアーズ・テキスタイルコレクションを発表した。もともと存在するモチーフや柄、日本らしい柄の復刻のリクエストがあり、〈細尾〉が代々受け継いできた帯のパターンをアレンジした33色を展開。
ジョルジオ・モランディーニとマーク・ロスコの色のトーンと、〈細尾〉の帯柄の融合はエレガントで、色々なインテリアにしっくり合いそう。

〈アンビエンテック〉と〈細尾〉。この2つのブランドには情緒があって、それでいて底力を感じる。
本当に素晴らしい。
edit : Sayuri Otobe
ライター、コーディネーター 浦江由美子

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