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輪郭の美しいティーカップ。文:辰野しずか (クリエイティブディレクター、デザイナー) #3March 20, 2026
このカップを初めて見たのは、2025年6月、コペンハーゲンで開催されたデザインイベント「3daysofdesign」を訪れたときのことでした。街の一角にある小さなカフェで、〈1616 / arita japan〉による「MANZ “Contour” Tea Cup」のお披露目が行われていたのです。
その場では、ティーカップにロゼワインが注がれて振る舞われていました。手に取った瞬間、形やテクスチャー、色のバランスがとても好みだと感じ、「なんて素敵なカップなんだろう」と思ったのを覚えています。控えめなのに、きちんと存在感がある。その輪郭の美しさが、強く印象に残りました。

会場には、このデザインを手がけたデンマークの陶芸家、リカード・マンツの娘であるセシリエ・マンツをはじめ、ファミリーの姿もありました。あとから聞いた話では、カップを無事に発表できたことを、家族みんなで涙を流して喜んでいたそうです。もともとこのカップは、セシリエが父のデザインを復刻したものだとか。飲み口の形状について納得のいくラインを見つけるまで、完成までに2年かかったと聞きました。

実際に使ってみると、その理由がよくわかります。口当たりがとても良いのです。ほんのわずかな輪郭の違いが、飲むときの感覚をこんなにも変えるのかと驚きます。背景を知るほどに、このプロダクトへの愛着も深くなっていきました。
我が家では、お茶はもちろん、ワインや焼酎、時にはご飯をよそうなど、さまざまな用途で使っています。使い方を限定しない懐の深さも、この器の魅力のひとつです。
使うたびに、あのカフェで聞いた親子のものづくりの話を思い出します。思いを込めて生まれた器だからこそ、私も大切に使い続けていきたい。そんな気持ちにさせてくれるカップです。
クリエイティブディレクター、デザイナー 辰野しずか

たつの・しずか/〈Shizuka Tatsuno Studio〉代表。ロンドンのキングストン大学プロダクト&家具科を卒業後、2011年に独立。物事に潜む可能性を見つけ出し、昇華して可視化することを強みとし、実用的な道具から情緒的なオブジェまで領域を横断しながら制作を行う。造形の美しさにとどまらず、ブランドの核となるコンセプト設計や商品企画にも関わり、「ものづくりの軸」を定めた上で表現を組み立てている。プロダクトデザインを中心に、クリエイティブディレクション、展示空間の構成、アート制作へと活動を展開している。




























