しなやかな自分を作る日常ごと。自分を上げてくれる「寝香水」。 写真と文：久保直子 (ウェルネス＆ビューティジャーナリストほか) #4December 25, 2025

私は植物療法士として、嗅覚生理学に基づき、日常生活の中で香りを積極的に取り入れています。香りの持つ効果は高く、気分に大きな影響を与えることを実感しています。

香りの分子は、鼻の奥にある粘膜に溶け込み、受容体と結びつくことで、電気信号と変換され、ダイレクトに脳へと伝わるそうです。この伝達にかかる時間はわずか0.2秒と言われています。

記憶や情動を司る大脳辺縁系に伝わるため、効果の現れが早く、記憶にも残りやすいのが特徴です。気分を瞬時に変える。香りのこの特性は、大きな魅力だと感じています。

「自然の香り」といえば、テルペン類（森林や柑橘系の香りをつくる成分）やエステル類（フルーツや花の甘い香りの主成分）など、数十〜数百種類もの化学成分が凝縮された精油が代表的です。これらの成分が香りを形づくり、風邪予防、花粉症対策、リフレッシュやリラックス、睡眠サポートなど、さまざまな作用をもたらします。ですが、今回お伝えしたいのは、アロマの機能性についてではなく、眠る時に身に付けるフレグランス、「寝香水」についてです。

ファッションの延長線上で語られることの多いフレグランスですが、私は、眠る時にもフレグランスをつける習慣があります。

その日の気分で好きな香りを選び、心地よく眠りにつきたいのです。

香りをつけるタイミングも、その日の状況によって変えています。寝る直前につけることもあれば、睡眠前の30分から1時間前に香りを纏うこともあります。

つける場所は、主にうなじやデコルテ。ふんわりと香りが立ち上り、寝ている間も心地よさが続きます。外出時には控えがちな部位にも気を遣わずにたくさんつけられるのも、「寝香水」ならではの楽しみ方です。

精油とフレグランスの大きな違いは、香りの持続時間です。アロマを焚くこともありますが、精油は自然由来のため香りが飛びやすく、すぐに消えてしまいます。一方、フレグランスは持続時間が長く、時間とともに変化する香りをゆっくり楽しむことができます。

寝香水をつけた後、眠りの質を高めるための「眠りの儀式」を行います。

「こんな女性になれたらいいな」「いま手がけている仕事がこうなるといいな」など、いい未来を想像しながら香りを味わうのです。イメージトレーニングを行うことで、気持ちが前向きになり、自然とリラックスし、気分も良くなります。

寝つきもよくなり、深い眠りへと繋がり、翌朝の目覚めもスッキリします。ほのかに甘やかな香りを枕に感じると、朝起きた時もとても気分がいいです。自分の機嫌を整えるための、心地よいルーティン。私にとって寝香水は、まさにそんな存在です。

まだ試したことがない、という方は、一日の終わりをやさしく締めくくり、そして心地よい朝を迎えるための小さな習慣として、ぜひ一度取り入れてみてください。

※アレルギーのある方や、香りに敏感な方はつける場所や量にお気をつけください。

さまざまな特性を持ち、複雑に融合している香りの世界は、奥深いもの。秋冬の時期は特に、温かみと奥行きのある香りを選んで身につけることが多いです。

柑橘系やフローラルに、ウッディやスパイシーのアクセント。最後にアンバーの香りが残り、心を落ち着かせてくれます。香りは、心をしなやかに整えるために、私には欠かせないものです。心地いい夜を演出してくれるフレグランスをいくつかご紹介したいと思います。

これまで4回にわたって、すこやかでしなやかな体と心を整えるための日常ごととして、私の1日のルーティンを紹介してきましたが、いかがでしたか。

紹介した内容は、あくまで一例に過ぎません。アーユルヴェーダについても、ここでは説明しきれないくらいの哲学があり、その奥行きは語り尽くせないほど。大切なのは、自分のライフスタイルに合っているか、自分自身が心地よく感じられるか、そして日常の中で無理なく続けられるか、だと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんのウェルネスビューティライフの構築に、少しでもお役に立てていただければ嬉しいです。