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ワインのはなし。「骨太なお料理と何を飲む?」 連載コラム : 山口萌菜 #3February 20, 2025
私は遺伝子的にアルコールに強くない。
お店をやっていると、さぞ酒豪でしょうとよく言われるのだが、学生の時にやったアルコールのパッチテストも赤くなったしお酒入りのチョコレートなんかも苦手な方だった。
最初に飲んだお酒は、当時働いていたトラットリアのクラシックなイタリアワイン。
お酒は飲めば飲むほど飲めるようになるからと、好奇心と意欲だけは人一倍、いろいろな味を摂ることも得意で頑張る気持ちはあるのに、追いつけない自分がとっても悔しかった。
ヴァンナチュールと呼ばれるワインの世界に魅了されたのは、そんな私でも楽しく飲めるものが多いのに気づいたことと、エチケットにアートの精神やメッセージが宿っていて、“泥臭くおしゃれなんかしないで昔ながらの縦社会で働く、レストランの精神”に疑問を持っていた私の気持ちにフィットしたからだった。
そんなわけでヴァンナチュールを好んで選び、飲むようになったのだが、ここでは「クラシックなワインを腰を据えて飲みたい」というお店がいくつかある。
その一つが三軒茶屋の三角地帯にひっそりとこじんまりとあった『ヌガチン』というビストロである。
ウフマヨ(半熟のゆで卵とマヨネーズとお塩と胡椒だけなのになんでこんな特別な気持ちになるの⁉︎)とか、大きなテリーヌ型からテーブルで切り出すパテドカンパーニュ(玉ねぎをバルサミコでぎゅーっと煮詰めた佃煮の付け合わせがなんとも美味しい)、ギアラの煮込み、ステックフリット(すっごく大きくて表面がガリガリっと焼かれている)…。
女性のオーナーなのだけどすごく骨太なお料理で、そのお料理とチャーミングな店主のことが大好きな常連さんがたくさんいるお店だった。
何にも見えないくらい暗い店内、キャンドルの灯で常連さんたちにまじってお話をしながら飲むシラーが何より大好きで、去年お店は閉じてしまったのだけれど、今もタイムスリップしてあの赤いテーブルクロスの店内で食事をしたいなぁとよく思い出す。
今日の写真はその『ヌガチン』に最後に伺った時の写真。
飲んだワインは、ドメーヌモンジャールミュニュレのマルベックだったかな?と記憶している。
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あ〜、お腹が空きました!
『Cyōdo』オーナー 山口萌菜
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