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「似合う」をほどく。写真と文:長見佳祐 (ファッションデザイナー) #1December 05, 2025
夏にずっとTシャツばかり着ていた友人が、白い襟付きのシャツを着てきていて、よく似合っていた。そう思うとき、彼とシャツ、人と物の関係がうまく噛み合った=パズルのようにフィットしたと感じる。けれど一方で、彼の家族は同じ格好を見て、なんだかぎこちないと笑う。「えー、私は結構似合うと思うけどな」と思っても、他の誰かにとってそうではないという事態。
これは一例だけど、誰にでもそんな経験はあると思う。「似合う」の不思議さについて、15年ほど服作りに携わりながら、その隙間で考えてきた。つぶやきでもなく、メモでもインタビューでもなく、こうして考えを綴ること自体レアケースなのだが、良い機会をいただいたので、未熟ながらその断片を繋げておきたい。

やや先回り気味に結論を置いておくと、「似合う」はどうやら人と物の間には成り立っていない。彼の家族がどこか浮足立った白シャツ姿を不自然に感じてしまうように、「似合い」は、見る人次第でひらひらと反転する。じゃあ人と服が「似合って」いないのだとしたら、そのとき私たちは何を見ているのか。
そもそも「似合う」は不思議な表現で、多くの場合、褒め言葉だけど、「〜くらいがお似合いだ」と皮肉まじりに伝わってしまうこともある。なんだったら、初対面の人から「その上着、お似合いですね!」と言われると、どこか身構えてしまう。それほど互いのことも知らないのに、なにを手がかりにと。必ずしもお洒落とか粋を意味するものでもないし、素直に肯定を示す表現とは言えない。
彼の家族が、彼のシャツ姿を「似合っていない」と感じたのはなぜだろう。普段カジュアルなスタイルばかりだったのに、突然身だしなみに気を使っているように見えたから? あるいは長髪に白シャツだと、性格が真逆の、別の誰かが重なって見えたかもしれない。

「似合い」は着た人⇔服の間の、閉じた関係のことじゃなさそう。おそらく、見る人=観測者の中の出来事のように思える。自分自身は、姿見を前に「似合う」と感じられるんだっけ。次回も続けて考えてみたい。
ファッションデザイナー 長見佳祐













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