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ヨーロッパと日本の美学を取り入れた庭。写真と文:ジェイク・ホブソン (〈ニワキ〉ファウンダー) #3September 19, 2025
私が庭作りで目指しているのは、西洋庭園の技法である幾何学模様や動物型の「トピアリー」と、日本の伝統的な刈込を融合させたスタイルです。
イチイや、ツゲなど、ヨーロッパの庭園特有の構造性に、日本の刈込が生み出す自然な景観を取り入れた、いわば「オーガニック・トピアリー」。庭全体に、規則的な形を散りばめ、奥行きを演出して空間を広く感じさせることを意識しています。
この考え方は、日本庭園から学んだものです。たとえば島根県の「足立美術館」では、松の木を前景は大きく、奥に行くほど小さく配置し、実際よりも広く感じさせる遠近法を巧みに使っています。トピアリーというと、“彫刻”のように捉えられてしまいますが、私にとって彫刻は動かない完成品。一方で、植物を使った造形は常に変化し動きのあるもの。剪定者と植物の間にある“対話”による変化が何より面白いのです。

自宅の庭の左中央に並ぶ三列の波型のツゲは、当初は一つずつ独立させて刈り込む予定でしたが、しっくりこなかったため、上部を緩やかな波形に刈り直し、一体感と柔らかさを出しました。
最近は庭に新しいオフィスを増築したので、これらのツゲをすべて掘り起こして奥に植え直すことに。回復まで1年ほどかかりましたが、ようやく以前のような美しい姿に戻りつつあります。

ツゲは初夏にぐっと伸びるため、イギリスではバラが咲く6月初旬に剪定するのが習わしです。
最近は、ツゲの形が少し崩れても自然な変化として楽しめるようになりましたが、それでも剪定が大好きなので、タイミングが合えば数日かけて一気に作業します。時には、細かな調整に失敗してイライラすることも(笑)。植物は生きているので、少しのミスならすぐに回復してくれます。
それよりも大変なのは病害虫です。ツゲに卵を産む蛾は、幼虫が葉を食べて庭全体をダメにしてしまうことも。ロンドンでは深刻な被害が出ていて、うちの庭は長らく無事だったのですが、ついに我が家の庭にも被害が出ました。丸一日かけて幼虫を取り除きましたが、来年はさらに警戒が必要かもしれません……。これもまた、庭仕事の一部なのです。
edit:Sayuri Otobe
〈ニワキ〉ファウンダー ジェイク・ホブソン
