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大人になって始めた習いごとの話。写真と文:前田エマ (モデル) #1August 04, 2025
2025年6月に、初めてのエッセイ集『過去の学生』を出版した。本を書いた後に起こった気づきや変化について、4回にわたって綴ってみようと思う。
この本には、学生時代にやっていた習いごとだけでなく、大人になってから始めたものの話もいくつか書いた。すると感想の中に、「私も習いごとを始めたいとここ数年思っているのですが、なかなか……笑」と口にする人が、想像以上に多くて驚いた。
「じゃあ、今日帰ったら、すぐに無料体験に申し込むといいですよ。それと、家や職場に近い方がいいですよ。通うのが億劫になりますからね」と私は答えた。
「やりたい!」というきらめく気持ちも、多くの場合、数日経てば流れ星のようにあっという間に消えてしまう。人間は、何かと理由をつけたがる。面倒くささが勝ってしまう生き物だ。

私は地道にコツコツ続けられるタイプでは決してない。韓国語教室に通っているのも、自宅でテキストを広げようものなら、15分も経たずに飽きてしまうから。お習字だって通信教育だったら、家のあれこれが気になってしまい、無心になれるあの贅沢な時間を知らずに終わっていただろう。Youtubeで探し出した「毎日5分だけ!」という謳い文句のトレーニングだって、たったの2日でギブアップしてしまうので、毎週ピラティスに通っている。
自分にとても甘い人間なので、習いごとに通っているのである。
edit : Sayuri Otobe
モデル 前田 エマ

まえだ・えま/1992年神奈川県生まれ。東京造形大学在学中にウィーン芸術アカデミーへ留学。モデル、写真、ペインティング、ラジオパーソナリティ、キュレーションや勉強会の企画など、活動は多岐にわたり、エッセイやコラムの執筆も行っている。連載中のものに、オズマガジン「続、とりとめのない日々のこと。」、me&you「前田エマ、韓国の服にあう。」がある。現在、Podcast『日々の句読点。』ではパーソナリティーを務める。著書に小説集『動物になる日』(ちいさいミシマ社)、『アニョハセヨ韓国』(株式会社三栄)、そして初のエッセイ集『過去の学生』(ミシマ社)が2025年6月17日に刊行。