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理想の物件を求めて、東京・神保町へ。SNSの対話から生まれた、ミニシアターの輪。写真と文:稲田良子 (ミニシアター『シネマリス』支配人) #2January 16, 2026
物件探しが始まりましたが、最初から東京・神保町と決めていたわけではありません。既存の建物を映画館にする場合、絶対条件となるのは、天井の高さです。地下や2階以上だと、階段の規格もとても重要。1階であれば階段の問題はクリアになりますが、今度は家賃が高くなります。昼夜の人口は? 最寄り駅の乗降客数は? なども考慮しながら、街を歩き回る日々。そんな折、不動産会社の方から紹介されたのが、のちに『シネマリス』となる物件でした。

ガラス張りの入口を入ると、建物中央が円筒型の吹き抜けになっていて空が見える。その円筒に沿って階段を下りた先に広がる空間。とてもワクワクする物件でした。
秘密基地に入っていくようなアプローチの先に映画館があったらなんて素敵でしょう! 地下へ降りてみると、懸念していた天井も十分な高さがあります。「ここに受付を置いて、こちらをシアターに……」。想像が一気に膨らみました。ここに映画館を創りたい。そう思ったものの、改装工事や許認可周りは想像以上に難しいものがありました。
映画館を規制する法令の多くは、映画が娯楽の中心だった時代に策定されたため、現代のミニシアターには適合しないのでは? というものもあります。とはいえ、不特定多数の来場者が集う場所を衛生的に保ち、もしもの場合は安全に避難誘導する、ということが前提になっているので疎かにはできません。
設計士チームと一丸となり、この魅力的な建物の個性を活かしながら、いかに法令を遵守し安全を担保するか。それは、長い挑戦の始まりでした。

物件探しを始めた頃からXで「ミニシアターを創る」と称して発信を始めました。物件探しの裏側や、ミニシアター巡りの様子、工事を経て開業に至る過程をつぶさに報告することで、映画館が生まれる過程をみなさんと共有できたら面白いだろうと思ったのです。
発信するなかでいろいろ気づかされることも多くありました。例えば、劇場内の飲食というテーマひとつとっても、ミニシアターを愛するフォロワーさんの間では、「集中できないから禁止してほしい派」と「仕事終わりに駆け込むから飲食をOKにしてほしい派」の2つに別れたり。時には、浅はかなポストをしてお叱りを受けたり。
このような過程を経て、シネマリスは徐々に出来上がっていったと思いますし、みなさんにとっても、「私(たち)の映画館」として愛着を持ってもらえたのではないかと思います。
Xの効用でもう1つ嬉しかったことは、DMを通じてお手伝いをしたいという方が何人もいらしたことです。アルバイトはまだ募集できないことを伝えると、「ボランティアでも良いから手伝いたい」と言ってくださった方々に、どれほど助けてもらったことか。チームの平均年齢がぐっと下がったことも、とても良かったと思っています。次回も、オープンまでの軌跡についてお話します。
ミニシアター『シネマリス』支配人 稲田良子






























