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花と緑の“ジャケ”コレクション。 編集後記「窓辺に、花と緑を。」April 23, 2024
花と緑の“ジャケ”コレクション。
この特集をつくっていた2月から3月、空気が日々暖かくなっていくのを感じながら、自然と家で聴く音楽も春らしいものに変わっていきました。ここでは今回の特集内容に合わせて、編集作業中に聴いていた“花と緑ジャケ”レコードを紹介します。どれも本誌を読みながら聴くにはぴったりの音楽かと思います。サブスクリプションサービスでも聴けます(4月9日現在)ので、ぜひ探してみてください。
『What A Beautiful Place』Catherine Howe
イギリスの女性シンガー・ソングライターによる1971年作。水仙が咲き誇る湖畔に佇む、ワンピース姿の少女。夢の中かのような美しい風景に、ジャケットを眺めているだけでも心がやすらぎます。楽曲もおおらかなフォークソングが並び、おすすめはストリングスが印象的なB1「It Comes With The Breezes」です。
『Some Other Spring』Greetje Kauffeld
オランダの女性ジャズシンガーによる1980年の作品。A5「Somewhere Over The Rainbow」のカバーは、しっとりとした鍵盤と歌い出しから、サビ前で一気にテンポが上がり駆け足に。軽快なリズムと柔らかな歌声が春の陽気にぴったりです。ジャケットのつぼみはモクレンでしょうか。弊誌2023年6月号「朝を楽しむための28のこと」の取材の中で知った一枚でもあります。
『Journey Through The Secret Life Of Plants』Stevie Wonder
1970年代のスティービー・ワンダーといえばファンキーでソウルフルな名作揃いですが、’79年作のこちらはエキゾチックでアンビエント的な楽曲が並びます。「フラワー、パワー、パワー」のコーラスが癖になるB2「Power Flower」をよく聴きました。ジャケットに描かれている花の詳細は不明ですが、ハイビスカスのような、南国に自生する品種のように見えますね。
『Nico Paulo』Nico Paulo
ポルトガル系カナダ人の女性シンガー・ソングライターによる、2023年のアルバムです。ジャケットは花いっぱいの海辺で、(おそらく)摘んだ花を片手にカメラに向かって走ってくる少女の写真。ただ、少女の表情が写真からははっきりと読み取れず、むしろどこか不穏で、アリ・アスター監督の映画「ミッドサマー」を思い出させます。しかし内容はエバーグリーンなフォークソングばかりで、実に聴き心地のいい一枚。のびやかな歌声が春風のように優しく心を撫でてくれます。
(本誌編集部/松崎彬人)