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いつも記憶に残るのは、京都のなんでもない風景。編集後記「ひとりでも、京都」February 21, 2023
いつも記憶に残るのは、京都のなんでもない風景。
取材の合間の鴨川、デルタの少し南。京都在住のライターさんと移動中、彼女の知り合いが自転車で通りかかって、「あら!」と井戸端会議がスタート。僕は話の内容には耳をそばたてず、少し離れたところから二人を眺めていました。1月半ばのことです。寒空の下で人もまばら。風がない日で、流れが緩やかな川は曇り空を映していました。静かな水面にごく小さな波を立て、上流からゆっくりと泳いでくる鴨の列。対岸には、太極拳に集中するローカルのご老人。会話中の二人にもういちど目をやると、彼女たちもまた、この風景に溶け込んでいました。
鴨川は、京都の人のなんでもない日常が垣間見える場所。訪れるたびに、自分はここに暮らす人ではないのだと実感すると同時に、ヨソものとしてこのノスタルジックな風景を眺められることを少し嬉しく思います。出張でもプライベートでも、京都でひとりの時間ができたら自ずと鴨川へ足が向き、ただただそこに暮らす人々の様子を眺めたくなるのです。
今回の特集は、「ひとりでも、京都」。鴨川の歩き方はもちろん、器にワイン、パン、あんこ、モダン建築、ヴィンテージショップなど、いまひとりで巡りたい街のトピックを切り取りました。ごはん情報も充実の一冊です。気持ちいい春の京都、ひとりで旅すれば街の新たな表情に出合えるかもしれません。
(本誌編集部/松﨑彬人)