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いいとしか言えない。編集後記「カフェと音楽」November 21, 2024
いいとしか言えない。
この前、鎌倉のカフェでモーニングを食べているときに聴いたJoão Donatoの「É Menina」。緩やかなサンバのリズムと爽やかなコーラスは、店内に心地よくそよぐ“風”のようでした。3年ほど前、札幌のカフェで聴いたEnjiの『Ursgal』。当時、まだマイナーだったモンゴル人ジャズシンガーの奥ゆかしい声に反応した僕に、マスターが「好きですか?この音楽」と話しかけてくれ、今では音楽を薦め合う仲になりました。学生の頃、渋谷の『ドトール』で聴いたBill Withersの「Lovely Day」。飽きるほど聴いたはずのヴォーカルは、人混みにぐったりしたこの日でさえも心を優しくほぐしてくれ、“愛すべき一日”に変えてくれました。
カフェと音楽。この組み合わせが素晴らしいことなんて説明不要かと思います。おいしいコーヒーに心地よい空間、そこに良質な音楽ってもう「最高」以外に書くことないです。なんなら、他のお客さんにバレるのがなんだか恥ずかしいから、カフェで流れている曲をこっそりShazamする瞬間もいいですし、かかっているレコードを「写真撮らせてください」と言うのも野暮だからと、チラ見を繰り返して記憶する必死さなんて愛おしすぎる。それに、カフェで出合った音楽をその場でサブスクで探し、イヤホンで聴きながら帰る時間もたまらなくいいですよね。カバンの中から、カフェで買ったコーヒー豆のいい香りが漂ってきたらなおよし。聴きながら帰った一枚が「やっぱり素敵だわ〜」となってレコードをポチる時間もいい(見つからなくて「いつかレコ屋で見つけとき3000円以内なら買うリスト」に加えることになったとしても、先々の楽しみが増えるからそれもOK)。届いたレコードに針を落として、この前買った豆でコーヒーを淹れて……はい、もう満点です。良すぎる。そんな気持ちで作った一冊です。
(本誌編集部/松崎彬人)