MOVIE 私の好きな、あの映画。
極私的・偏愛映画論『夜は短し歩けよ乙女』選・文 / 加藤駿介(「NOTA&design」主宰) / March 04, 2020
This Month Themeそろそろ、京都に行きたくなる。
京都と学生時代。
京都と言えば、歴史ある風情を求めて今や世界各地から観光客が訪れる。そんな京都のパブリックなイメージといえば、変わらない「伝統と歴史」「大人の街」。でも、実は日本有数の「学生の街」でもある。京都市にはたくさんの大学があり、常に若いカルチャーが生まれ続けている。映画『夜は短し歩けよ乙女』で描かれている、怪しい学生達なんて存在しない架空のお話だと思う人が大半だと思うが、実は結構リアルに描かれている。
かくゆう私も大学時代を京都で過ごし、様々な出来事をこの街で体験し、今の自分があると言っても過言ではない。
私の入った大学は当時、日本でも有数の変わりモノ達が集まるところで、当時の先輩たちはヒッピー的な風貌の人がいれば、革ジャンにサングラス、全身デニムなどなど刺激的な面々がいた。学園祭は年2回。24時間エンドレスで3日間の開催。コタツを持ち込み、お酒を飲みまくりながら連日のドンちゃん騒ぎといった感じだった。(現在は色々あって、学園祭もなくなりましたが……)
そんな学生時代に覚える事はやっぱり「恋とお酒」。
今、振り返れば当時好きだった子に少しでも振り向いてもらえるように先輩から教えてもらった、知らない本や音楽、映画、お店の事を必死に吸収していたように思う。
映画のように鴨川に座るカップルを横目で見ながら、友人たちと缶ビールを開け朝まで過ごし、覚えたてのお酒で失敗した事も今となっては良い思い出。
この映画の主人公たちが良いのは、受け身ではなく、常に行動力と勢いがある事だ。「たまたま」「偶然」というものは、「たまたま」降ってくるものではなく、自分の行動によって降ってくる。そこで出合った「縁」によって新しい出来事や出会いが生まれ自分が形成される。
年齢を重ねるとどうも受け身になりがちで、知らない事や人に出合うこと、新たな場所に行くのが億劫に思うこともある。だが、この映画を観るとあの頃の感覚を思い出し、木屋町や先斗町に繰り出して新たな出合いを求めたくなる。