FOOD 食の楽しみ。

菓子研究家・長田佳子さんの甘い時間。
『珈琲美美』の珈琲ゼリー。 &Coffeebreak 喫茶店のこと、そしてコーヒーの話 。December 24, 2022

2022年12月6日発売の『&Premium』の特別編集MOOK「喫茶店のこと、そしてコーヒーの話」。 ほっと一息つくときに、甘いものは欠かせないもの。空間やコーヒーの味もさることながら、その喫茶店でしか味わえない心に残ったスイーツメニューを菓子研究家の長田佳子さんに聞きました。

菓子研究家・長田佳子さんの甘い時間。『珈琲美美』の珈琲ゼリー。&Coffeebreak 喫茶店のこと、そしてコーヒーの話 。

ひとくち運べば広がる、深くて複雑なコーヒーの世界。

 気取ることなく思い思いの時間を過ごせるのが、喫茶店のいいところ。旅先でも、地元の方には、おいしい料理屋さんよりも、おしゃれなカフェよりも先に、良い喫茶店があるかどうかを聞いてしまいます。その土地の日常にある場所だからこそ、常連さんの様子や、コーヒーや甘いものの味付けの濃さからも、地域らしさを感じることができるんですよね。この店を訪れたのも、2年ほど前に福岡を旅したとき。大濠公園を歩いた後に、友人の案内で立ち寄りました。夏だったのでさっぱりとしたものをと選んだのが珈琲ゼリー。コーヒーそのものなのではと思うほど香りが立っていて、口に入れた瞬間、「これはひと味違うな」と感じたことを覚えています。仕事柄、私も時々珈琲ゼリーを作りますが、コーヒー自体が温度によって味が変わりやすい繊細なものですし、材料がシンプルなだけに、酸味が立ちすぎたり、薄くなったりと難しいんですよね。でもこのゼリーは、自家焙煎した豆をゆっくり抽出して作られているからか、豆の味わい深さや複雑な表情がそのまま凝縮されている。その丁寧な仕事には、敵わないなと思わされます。生クリームが表面の一部にだけかかっているところにも、味の変化が楽しめるようにとの作り手の気遣いを感じました。常連さんと、私のように初めて訪れたような人とが自然と共存している店内空間は、福岡の懐の深さを表しているかのようで魅力的。また福岡を旅した暁には、必ず立ち寄りたい名店ですね。

珈琲 美美

創業45年の自家焙煎のネルドリップ専門店。コーヒー業界で名高い創業者の森光宗男さんの技を妻の充子さんが引き継ぎ、隔日焙煎。店頭で自らドリップもしている。▷福岡市中央区赤坂2−6−27 ☎092−713−6024 喫茶(2F)12:00〜18:00 月火休 豆販売(1F)11:00〜18:30 月、第1火休

Coffee Bimi

長田佳子
Kako Osada

〈foodremedies〉主宰。ハーブやスパイスを使ったお菓子を研究しながら、開発・製造を行う。本誌Webサイト『&Premium.jp』にて、「長田佳子の季節のハーブを愉しむお菓子。」を連載中。2021年から山梨と東京の2拠点で活動中。

photo : Tetsuo Kashiwada text : Emi Fukushima

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