FASHION 自分の好きを身に着ける。
〈オーラリー〉デザイナー・岩井良太さんの服づくり。細部まで行き届いた、作り手のセンス。May 18, 2025
シンプルで、スタンダードなプロダクトは、細部に差が出る。確かな服作りを続けるブランドに聞いた製作のこだわりや思い。そこには経験に裏付けされた、作り手のセンスがあった。
2022年5月号「センスがいいって、どういうことですか」より、〈オーラリー〉デザイナー・岩井良太さんのインタビューをWEBで特別に公開します。
素材への追求から生まれる、直感的に体が喜ぶ服作り。

はっきりとは表現できないけれど、そこはかとないセンスを感じる。適度なゆるさや抜け感があるけれど、野暮ったくない。デザイナー岩井良太さんが手がける〈オーラリー〉は、そんな洗練された空気感を纏ったブランドだ。服作りにおいては、毎シーズンのテーマを明確に設けることはなく、その時々、頭の中にふと浮かんだ雰囲気を大事にしている。もちろん、そのふんわりとしたイメージがそのまま服になるのではなく、背景には緻密なものづくりのプロセスがある。ブランドは「素材の追求」をコンセプトにスタートしているだけあって、生地はすべてオリジナル。素材作りに始まり、形に落とし込むアプローチもユニークだ。一般的には作るものを決めてから生地を探すが、岩井さんの場合は糸になる前の原綿や原毛から考える。

はっきりとは表現できないけれど、そこはかとないセンスを感じる。適度なゆるさや抜け感があるけれど、野暮ったくない。デザイナー岩井良太さんが手がける〈オーラリー〉は、そんな洗練された空気感を纏ったブランドだ。服作りにおいては、毎シーズンのテーマを明確に設けることはなく、その時々、頭の中にふと浮かんだ雰囲気を大事にしている。もちろん、そのふんわりとしたイメージがそのまま服になるのではなく、背景には緻密なものづくりのプロセスがある。ブランドは「素材の追求」をコンセプトにスタートしているだけあって、生地はすべてオリジナル。素材作りに始まり、形に落とし込むアプローチもユニークだ。一般的には作るものを決めてから生地を探すが、岩井さんの場合は糸になる前の原綿や原毛から考える。
「紡績の仕方や編み地に惹かれて、そのための糸や素材作りを考え、最後にデザインするという順番。さまざまな業種の職人に相談しながらディテールを詰めていきます」
そのこだわりは、ブランドの定番でもあるシャツにも顕著に表れている。希少価値の高いエジプトの超長綿を細番⼿に紡績し、⾼密度に織り上げたツイルで作られたシャツは、柔らかい肌触りを出すために加工で⼀度⽣地を硬直させた後、何度も叩いてもみ洗いする。これにより適度にクタッとした理想的な風合いになる。本来は裏地である面を表地として使用するのも岩井さん流だ。


「とても綺麗な生地なのですが、ギラッと見えがちな素材でもあり、見た目の印象が強いので裏地を使うことにしました。それによって光りすぎず、自然な光沢に、よりマットな質感になる。逆に肌に当たる面は柔らかいので、肌触りもさらに良くなっています」
シルエットは、ベーシックなスタンドカラーでリラックスした雰囲気だが、首まわりだけはサイズ的にフィットさせたパターンにすることで上品な印象に。また毎シーズンのカラーは膨大な量の色見本を何度も見直して、そのシーズンに使いたい色をピックアップし、生地と合わせて徐々に絞り込んでいく。
「いつも考えているのは、ものを見るときの距離感。作るときはものすごく近くで素材を見ていて、見えてきた微妙な違いに変化を加えていく。でも合間に引いて見ることも大事にしている。センスいいなと感じる人は、どんな服を着ていても自分のものにしていて馴染んでいる。それは口で説明することでなく、自分なりの基準や俯瞰した視点を持っているから。僕の服も理屈ではなく、“雰囲気がいい”と思ってもらえるのが理想です」
直感的に体が喜ぶような服には、細部まで行き届いた配慮がある。素材への徹底的なこだわりやその姿勢こそが〈オーラリー〉の洗練された美しさに繋がっている。
岩井良太 Ryota Iwai〈オーラリー〉デザイナー
1983年生まれ。さまざまなブランドで経験を積んだ後、2015年に〈AURALEE〉をローンチ。’18年にはFASHION PRIZE OF TOKYO 2019を受賞。’19年秋冬コレクションよりパリコレに参加している。
photo : Shota Matsushima text : Chizuru Atsuta