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極私的・偏愛映画論『やかまし村の春・夏・秋・冬』選・文/池田晶紀(写真家) / November 20, 2017

This Month Theme心が温まる。

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大げさなドラマやファンタジーがないことに心が温まる。

サウナ発祥の地フィンランドでは、サウナは神聖な場であり、2000年もの歴史あるカルチャーとして人々の生活を温めてきました。実は同じく日本の伝統文化にも、とてもよく似た形状で蒸し風呂があります。どちらも共通する点は、似たような気候にあり水と森に恵まれたことだそうです。

この映画の舞台は、そのフィンランドの隣の国スウェーデンです。子どもたちが四季を通し、森や湖といった自然に囲まれた環境の中、移りゆく季節と共に成長していく光景を美しく描いた物語。原作者は『長くつ下のピッピ』や『ロッタちゃん』でも有名なアストリッド・リンドグレーンによるもの。

ぼくが「心が温まる映画」というお題から、この映画をおすすめしたい理由は、春夏秋冬、これといって大げさなドラマやファンタジーがないことです。ただそこにある生活習慣と自然と遊ぶ子どもたちの光景が、見ているだけで気持ち良く、リラックスともよく似た「感じる心を回復させる」効果をもたらせてくれます。あたたまるというのは、そんなほんのわずかな変化にも気づける子どもような心を持ちつつ、習慣化した日常をたのしむ気持ちのことをいうんだと思いました。サウナと一緒ですね。

illustration : Yu Nagaba
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春夏秋冬と移りゆく季節に、その生活にあった遊びがあります。春には花を摘み、お城の王女となったお話をつくり、夏になれば湖に飛び込み、冬は白く凍った水面でアイススケート。12月31日の夜には、来年の運勢を占う暖炉での鉛遊び。どこの国にもあるようなその土地にある習慣と遊び。季節を楽しむ生活に人の智恵が描かれています。
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Title
『やかまし村の春夏秋冬』
Mer om oss barn i Bullerbyn
Director
ラッセ・ハルストレム
Screenwriter
アストリッド・リンドグレーン
Year
1987年
Running Time
86分
『やかまし村の春・夏・秋・冬』
価格 ¥4,700+税
発売元・販売元 株式会社KADOKAWA

写真家 池田 晶紀

1999年、自ら運営していた「ドラックアウトスタジオ」で発表活動を始める。2003年よりポートレート・シリーズ『休日の写真館』の制作・発表を始める。2006年、株式会社「ゆかい」設立。2010年、スタジオを馬喰町へ移転。オルタナティブ・スペースを併設し、再び「ドラックアウトスタジオ」の名で運営を開始。国内外で個展・グループ展多数。アーティスト三田村光土里とのアートユニット「池田みどり」としても活動。現在、Coyote「水草物語」で連載中。フィンランドサウナクラブ会員、サウナスパ健康アドバイザー、シェアリングネイチャー指導員、水草レイアウター、かみふらの大使など。

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