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〈kosaji〉主宰 駒村志穂子さんが語る今月の映画。『若草物語』 【極私的・偏愛映画論 vol.124】March 25, 2026

This Month Theme暮らしのスタンダードが描かれている。

〈kosaji〉主宰 駒村志穂子さんが語る今月の映画。『若草物語』 【極私的・偏愛映画論 vol.124】

隅々まで見入ってしまう、マーチ家の家具や生活道具。

初めて『若草物語』を知ったのは子供の頃、毎週日曜の夜にテレビ放送していたテレビアニメ『世界名作劇場』だったと思う。当時は熱に浮かされたように本の虫だったので、毎週図書館に通っては、児童書の外国文学コーナーで山積みの本を借りてきて、読んでいた。リンドグレーンやケストナーの作品。『大草原の小さな家』『赤毛のアン』、ルイザ・メイ・オルコットの自叙伝的小説である『若草物語』の原作も読んだ。本作は、19世紀南北戦争時代のアメリカ、慎ましくも仲睦まじく暮らすマーチ家の四人姉妹メグ・ジョー・ベス・エイミーの物語。

何度か映画化されていて1994年版を観たのは、大人になってから。少女から大人の女性へと成長してゆく移ろいのなかのさまざまな悩みや挫折、ときめきや悲しみ、当時の時代背景における女性の自立や幸せについて、うつくしい四季とノスタルジックな情景とともに描かれてゆく。

個人的にじっくりと画面の隅々まで見入ってしまうのは、マーチ家の家具や生活道具。くすんだグリーンの壁に木のテーブルと椅子、台所のカップボードに並べられた食器やポット。そして思わず溜め息がこぼれる食卓風景のシーン。お皿いっぱいの焼き林檎、ブルーの絵皿にクラシックなティーセット、焼きたてのケーキやビスケット。ベッドサイドのお人形やキルト。姉妹の質素ながらも品のあるリボンやレース、ドレスも細部まで可愛らしいし、クリスマスの飾り付けや暖炉に吊り下げられた靴下は、まるで絵本の世界のよう。子供の頃、本で読んでむくむくと想像していた世界が色彩を帯びて動きだし、何度観ても心が色めき立つシーンばかりだ。

そしてふと気づけば、映画に登場する食卓風景や生活道具は、自分が普段の暮らしや仕事で手にしているアンティークやクラフトと親しみのあるものばかりで、今の私の暮らしの原風景となっていることにはっとさせられる。

時代を超えて世界中の少女達に愛されてきた物語は、大人になって改めて見直すと、心の深いところに触れられた感覚で、切なくもじんわりとしたあたたかさに包まれる。まだ女性が自由に生き方を選べなかった時代。自分を見失わないで、と母親が姉妹達に語りかける。

「美は老いに蝕まれるけど 心の美しさは——永遠に輝きを失わない
ユーモア 優しさ そして勇気 それが価値を持つのよ
この世は不公平かもしれないけど——少しでもいい世の中に」

時代は変わっても、子供の頃に空想して夢みていた世界より、現実はほろ苦くやるせなくなってしまうときもある。長く大切にされてきたもの、子供の頃から変わらず好きなものに囲まれた暮らし。それはほんのささやかな自分らしさかもしれないけれど、姉妹達が暮らす家のような素朴でぬくもりのある愛しき居場所だ。大人になった今もなお、物語のなかでそれぞれひたむきに生きる姉妹のように、自分だけの大切な根っこのようなものは失くさずにいたいと思う。

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作家志望のおてんばで自立心の強いジョーにウィノナ・ライダー、体が弱く心優しいベスにクレア・デインズ、負けず嫌いでおしゃまな末っ子エイミーにキルステン・ダンスト、高潔で博愛主義な母親にスーザン・サランドンと、なんとも贅沢なキャスト。近年リメイクされた『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』よりも原作のイメージに近い気がするのと、本の頁をめくる音が聞こえてきそうな穏やかな物語の流れが心地よい。
Title
『若草物語』
Director
ジリアン・アームストロング
Screenwriter
ロビン・スウィコード
Year
1994年
Running Time
115分
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『若草物語』
デジタル配信中
発売・販売元:株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©1994 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
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illustration : Yu Nagaba movie select & text:Shihoko Komamura edit:Seika Yajima


〈kosaji〉主宰 駒村志穂子

フランス・パリを拠点にヨーロッパを旅して集めた、背景に物語のあるアンティークやクラフトを紹介している。クラフト作家のキュレーションも担うことも。

instagram.com/kosaji_s

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