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パリの歴史的建造物を改装した、ジュエリーと宝飾芸術の学校『レコール』がオープン。February 06, 2024

ハイジュエリーメゾン〈ヴァン クリーフ&アーペル〉の支援のもと、フランス国内のみならず、世界各地でジュエリー文化を伝えることを目的として、2012年にパリに初めて創設されたジュエリーと宝飾の学校『レコール』。今秋、パリのグラン・ブールヴァール地区の個人邸宅を改装し、新たな拠点を構えた。

金箔が輝く木製の縁飾りがあしらわれた白壁とコリント式の列柱が見られるセレモニーホールとダイニングルーム。
金箔が輝く木製の縁飾りがあしらわれた白壁とコリント式の列柱が見られるセレモニーホールとダイニングルーム。
豪華絢爛な意匠が施されたバンケットホール。
豪華絢爛な意匠が施されたバンケットホール。
バンケットホールには、よく見ると、いくつかの紋章が掲げられている。
バンケットホールには、よく見ると、いくつかの紋章が掲げられている。
新古典主義様式による控えめな石造りのファサード。このような建築としては、現存する数少ないもののひとつで、 パリの歴史的建造物に指定されている。
新古典主義様式による控えめな石造りのファサード。このような建築としては、現存する数少ないもののひとつで、 パリの歴史的建造物に指定されている。
階段のシャンデリアも印象的。今回の改装に合わせて、新たに設置されたもの。
階段のシャンデリアも印象的。今回の改装に合わせて、新たに設置されたもの。

パリの個人邸宅を改装した、ラグジュアリーな空間。

1778年、当時人気を博した建築家フィルマン・ペルランによって建てられ、今ではパリの歴史的建造物にも指定されている個人邸宅『オテル ド メルシー=アルジャントー』。邸宅名は所有者ではなく、最初の住人となったメルシー=アルジャントー伯爵こと、フロリモン・クロードの名にちなんでいる。彼はマリア・テレジア統治下にフランス駐在オーストリア大使として、フランス国王・ルイ16世とマリー・アントワネットの結婚をとりもった人物。王妃となったアントワネットの友人であり、相談役でもあった彼は、王妃の贅沢な好みと生活を諌めようとするものの、徒労に終わった。結果、王妃が逃亡することになったとき、彼女が宝石を詰め込んだ箱を彼に託したことで、その宝石箱は歴史を生き延びたといわれている。

時を経て、商人のニコラ・デュシェーヌが投資を目的にこの邸宅を購入し、邸宅内のアパルトマンには才能ある芸術家たちが暮らしていたという。作曲家のフランソワ=アドリアン・ボワエルデューは、ここでオペラ「白衣の婦人」を作曲し、彼の人気作のひとつに。また、イタリアの作曲家、ロッシーニは1825年にシャルル10世の戴冠式のための曲「ランスへの旅」をここで完成させたといわれている。

その後、保険会社の所有になり、レセプションホールはさまざまなゲームクラブに貸し出され、会員たちが集う社交場に。1891年、社交サークルの支配人を努め、南米でワインの卸売に携わった経験を持つ人物グラン・セルクルが、建築家のアンリ・フェルヌーに依頼し、豪華なバンケットホールを完成させた。エクアドル、ウルグアイ、ボリビア、ホンジュラスの紋章が掲げられたこの壮大なスペースに、ジュエリーと宝飾の学校『レコール』による展覧会が開催される。歴史上初めての、一般公開となる。

オープニングを飾るのは、舞台ジュエリーの魅力を伝える展覧会。

ヴァンクリーフ&アーペル レコール
ヴァンクリーフ&アーペル レコール
ヴァンクリーフ&アーペル レコール
Exposition Bijoux scéne Comédie Française. L'Ecole des Arts Joailliers. Photo Benjamin Chelly (30)

オープン記念の展覧会となる「コメディ・フランセーズの舞台を彩るジュエリー」は、劇場街でもあるこの地区にある劇場からのコレクション120点のアクセサリー、美術品、資料が展示される。プロローグとして、ジョルジュ・フェドーによる有名な戯曲『どうにもこうにも Un Fil à la patte』の公演を収めた映像の一部が上映される。その戯曲内で、誤解の種となるリングが登場し、物語が展開していく。この導入が展覧会の幕開けをユーモラスに演出する。展覧会を構成する第1幕と第2幕では、来場者は舞台裏を彷彿とさせる暗い部屋に導かれる。ここには絵画、グワッシュ、細密画、版画、写本、業者の請求書まで、初期のコメディ・フランセーズのありさまを甦らせるような品々が並んでいる。当時は、俳優たちが舞台で個人的に所有していたジュエリーを披露することで、社会的な地位をも示していたというが、今回は、筋書きに深く関わるものを劇場から借りて展示。舞台に映えた精巧な意匠が美しいジュエリーの数々に、きっと目を奪われるはず。バンケットホールに並ぶ、国立舞台衣装装置センターから貸し出された豪華な衣装も見逃せない。

今回の展覧会のために、内装デザインを手がけたのは、デザイナー、内装建築家、舞台芸術家のコンスタンス・ギセ。広々とした展示スペースだけでなく、6000冊もの書籍や雑誌などが並ぶジュエリーに特化したライブラリー、ジュエリー、宝石学、美学の変遷などに関する書籍が揃う初のブックショップ『レスカブークル』を併設する空間に。渡仏するときに立ち寄りたい、パリのジュエリーの美学を学べる新スポットだ。

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