FOOD 食の楽しみ。
料理研究家・ウー・ウェンさんのお取り寄せ。
毎日の料理に役に立つもの。 料理上手たちの、お取り寄せのある暮らしJanuary 29, 2023
2020年12月20日発売の本誌特集は『真似をしたくなる、お取り寄せ』。料理家をはじめ食の分野で活躍する人たちは、どんなふうにお取り寄せを使いこなしているのだろう。 味わいはもちろんのこと、作り手や、ともに分かち合う仲間との交流も大切に。身近で手に入る食材も上手に組み合わせながら日々の食卓を豊かに楽しむ6人に、おすすめの取り寄せリストと料理を教わった企画「料理上手たちの、とっておきのお取り寄せのある暮らし」から、ここでは料理研究家・ウー・ウェンさんを紹介します。
体は生きる資本になる、 それを支える食材たち。
ウー・ウェンさんのお取り寄せに対する考え方は、はっきりとしている。それは、毎日食べても飽きない、基本的なものであること。今回、紹介してくれた6品も、近場でも手に入りそうなものばかり。けれど、違うのはその質の高さだ。
「いつでも家にあってほしい、普通のものばかりです。自分や家族が好きなのって、結局こういうものなんです」
北海道から届く『しぶたの毎日きのこ』のマイタケは「素晴らしい」と絶賛。「すごく品のいい香りがするし、煮ても焼いても縮まず、色もにごらない。なんでなのか、不思議です。そんなキノコはここだけなので、お取り寄せしてでも毎日、食べたいと思っています」
この日に作ってくれた炊き込みご飯も、白米と分量の水、それに小株に分けたマイタケをギュウギュウに入れて炊いただけ。それだけでキノコから出汁が出て、旨味にあふれ、食べ応え十分。炊き上がった土鍋を開けたとき、フワッといい香りが漂い、白いマイタケが黒くならず、へたっていないのに驚く。
「ここはマイタケだけでなく生キクラゲもおいしいので、一緒にお取り寄せするのがおすすめです」
ちりめんじゃこも、常にそばにある、大切な一品だ。
「『猪塚水産』のちりめんじゃこは、すごく細かくきれいに揃っているんです。なので、火を入れても柔らかくて食べやすい。届いたらゴマ油と黒酢と酒でさっと炒めます。それをキッチンの隅に置いて、通るたびにひとつまみ、ふたつまみとおやつ代わりに口に入れるんです。だから、すぐになくなっちゃう。カルシウムもたっぷりで、私のサプリメントです」
中国で生まれ育ったウーさんには、医食同源の考えがしっかりと染み付いている。食べ物が体をつくり、健康を保つ。当たり前のことだが、そのために何を食べ、どう料理するか、頭を使うのは当然。
「料理が好きとか嫌いとかは関係なく、食べることは、人生に絶対に必要なこと。毎日が特別で、大事な一日。だから、私はお取り寄せするものでも、栄養があって、体にいいものにしたいんです」
おかゆにのせた発酵食の「一休寺納豆」も健康を後押しする優れもの。ストックしておいて、人に贈ったりもする。
「中国で豆豉は国民食です。一休寺納豆は、香りに雑味がなくて、小さいけれど噛みごたえもあります。ゴマ油で和えた香味野菜と一緒に食べると滋味深くてほっとします。これは添えものではなく、立派なおかず。塩気もちょうどよくて、おにぎりにしてもいいと思います」
ネギもまた、薬味ではなくメインの野菜としてとらえている。
「旬があるので、いつもではなく、年末に取り寄せることが多いですね。体を温めるので、冬の風邪をひきやすい時季は、一日1本必ず食べます。スープにしたり、炒め物にしてもいいと思います」
また、ふだんのものではないが、アイスバインは人が集まるときのおもてなしや、しっかり食べたいときに取り寄せる。
「『ふくどめ小牧場』のもので、前足と後ろ足を1本ずつ。前足は皮付きがあるので、ぜひ皮付きで。皮があると本当に滑らかでおいしい。ゼラチン部分は腸など体にもすごくいいです。茹で上がったら切り分けて酸っぱいキャベツやクレソン、ピクルスと一緒に大皿に。茹でているときの匂いもいいし、盛り付けるとみんながわーっと感激する。手軽だけどプレゼンテーション力が高い料理です」
肉をそいだ骨を茹で汁に戻して、スープにリメイクすることも忘れずに。
どんなときでも食べることは生きること。その根本をしっかりと支えてくれるのが、ウーさんのお取り寄せ品だ。
ウー・ウェンさんの取り寄せリスト
ウー・ウェン
Wu Wen
1963年中国・北京生まれ。'90年に来日し、'96年に雑誌に掲載した北京料理が話題を呼び、料理研究家に。東京で「ウー・ウェン クッキングサロン」を主宰。著書に『10品を繰り返し作りましょう』(大和書房)など多数。
photo : Sachie Abiko edit & text : Wakako Miyake